マンガばっかり

マンガ批評

裸一貫つづ井さん

★★★★

つづ井、による腐女子マンガ。
なぜタイトルが変わったのかと思ったら文藝春秋のクレアWEBで連載していたからなんだな。
内容は前篇をひきついでパワーは相変らず。
特にマンガのためにネタを作っているわけではなさそうなところが立派である。
少し腐女子ネタからずれてきているような気もするが、オタクであるということと腐女子であるということが、実際、少しずつ起きているような気もするので、その意味でもタイトルが変わったのはよかったのかもしれない。
ただ、以前の経験を踏まえた記述も多く、その際にかなり長めの説明をしなければならなくなっているあたり、少しうざい。
このまま連載するのもいいのかもしれないが、敢えて、ストップした方がいいような気もしている。

(No.1202)

腐女子のつづ井さん

★★★★★

つづ井による腐女子マンガ。
もうこの手の腐女子マンガには飽きたわ、どれも似たようなもんだし… と思って、評判を知りながらも読まずにいた。
今回、「まぁ、そこまで人気なら」ということであまり気も進まないながらも(勉強のために)読んでみたところ、ホロホロと目からウロコが落ちる。
なんてすばらしく意味のない存在なんだろうか、と思って、この上ない感動を覚えた。
まぁ、どこまでが実話でどこまでがフィクションか、もう、そういうことはどうでもいいが、つづ井さんと仲間たちの幸福が永遠に続くように、と願わずにはいられなかった。
自分は腐女子ではなく、腐男子でもないのだが、わかる、と思ってしまうものが多々あった。
腐女子の表現世界もこの本をきっかけに広がった気がする。

(No.1201)

MAO

★★★★

高橋留美子が現在連載しているマンガ。
両親を事故で失った中学3年生・菜花が大正時代にタイムスリップ。
そこで陰陽師・摩緒に会う。
タイムスリップ先と現代を行ったり来たりするあたりは、『犬夜叉』を思わせるが、大正という、遥か昔とは言えない世界であること、陰陽師という体系にも依拠しつつ話を進めるあたりは、より精緻になっているかもしれない。
主人公が中学生に設定されていることからも、あくまでジュヴナイル漫画なのだと思うが、古いながらもきちんとヴァージョンアップされていて、高橋留美子先生、健在だなと改めて思う。

(No.1200)

モトカレマニア

★★★★★

瀧波ユカリが現在連載中のマンガでドラマ化もされたらしい。
最近、Twitterに反政府的なツイートをしているのを見つけて、「あれ、瀧波ユカリはちゃんと仕事しているのかな」と思って、『脳死!! 江古田ちゃん』以来、ひさびさに読んでみた。
元カレの存在を忘れることのできない難波ユリカ27歳のコメディなのだが、すごい! 
「マニア」ということから、安野モヨコの『ハッピーマニア』のようなものかと思っていたのだが、遍歴モノではなく、あくまでユカリは真から抜け出せていない。
この変な心理、変な脳内大臣
東村アキコにも似ているが、もっとアングラな、誤解を恐れずに言えば日大芸術学部的な、江古田的な悪乗り女王という感じが大炸裂していて面白い。
日常生活の中で、静かに難波ユリカと同じような生き方をしている人もいるのだろうが、そういう日常性の中にいる驚異のメンタルの持主が生きているということを気づかせてくれるという社会的な意義(?)から言っても、非常に素晴らしいマンガであると思う。
ちょっとネットで検索してみたら、瀧波はラジオもやっていた! 顔出しの写真もあった! なんとマトモな人なんだ! …という意味でも、二重三重に瀧波ユカリがすごい人であることを再発見!

(No.1199)

スキエンティア

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★★★★

戸田誠二のマンガ。
医学と倫理の間について問う近未来SF短編漫画集、といったところだろうか?
帯には「禁断の科学×ヒト」とある。
新薬や新技術、AI、と、現代の医学と人間の倫理は、日々、試されているようにも思えるのだが、技術に頼りすぎることなく、人間の倫理の力というのも必要なのではないかというのが、7編の連作に貫かれている所だろう。
非当事者のお気楽さとも言えようし、肝心なところで人情譚に落とし込んでいるだけだという批判もあるかもしれないが、コロナ禍の中では、こうしたことが問われないままであり過ぎたのではないか、という気もしてくる。
まぁ、それにしても日本政府の馬鹿さ加減…
(No.1198)


テリトリーMの住人

★★★

南塔子による、女2人、男3人の恋愛模様を描く少女マンガ。
1人男が余るじゃないか、と思われそうだが、9巻現在、たしかに余っている…
さすがは南塔子で、5人の心情を描くのがうまい。
しかし、例によって5人が5人とも美人だったりイケメンで、それはそれでよいのだが、進路のことも頭にないようだし、親のことも、クラブのことも場つなぎに登場するのみで、基本的に誰と誰がくっつくかということしか頭にないようだ。
最初のうちは、複雑な人間関係が、どう動くか、という緊張があったが、転校生の暎茉がコミュニティに受け入れられてしまったら、もう後は脳みそつるっつる人間たちにしか見えなかったりするのだな。

(No.1197)

水は海に向かって流れる

★★★★★

田島列島の約5年ぶりの単行本。
前作の『子どもはわかってあげない』もなかなかの秀作で、映画化もされた作品。
自分の書いたコメントを探してみると、「こんなマンガがしっかり存在し、しっかり評価されていることを想うと日本も捨てたんもんじゃないな、と思う」と書いてあった。
あぁ、そんな感じだったな。
そして、このマンガもそうだ。
登場人物のキャラや状況が、少し極端すぎるきらいはあるものの、しかし、そういう立場の人だったら、たしかにまぁ、こう思うよな、こうするよな、というのがいちいち納得のできるマンガであった。
期待していいように思う。

(No.1196)