マンガばっかり

マンガ批評

どろろ

手塚治虫漫画全集(149)
★★★★★
読んでもほとんどタメにならない手塚治虫のマンガ。
妖怪だの、因縁譚だのというのは、最もキライな分野で、有名だからということで気が進まないながらに読み始めたのだが、これは最高傑作といってもいい作品であった。
火の鳥』には、教訓やら宇宙の神秘やらが多少、鼻につくところがあるが、これは「昔ながらの妖怪譚集」を装いながら人間のこと、親と子の情愛のこと… がいいバランスで表れていると思う。
そう、妖怪マンガなどと言いながら、ここでは「人間の怨念が妖怪になる」ということが貫かれており、それが人間ドラマになっているのだ。
雨月物語』に通じるところがあるというべきだろうか。

長男の手塚真によれば、「どろろ」とは、幼年期に自分が泥棒のことを言おうとした言葉らしい。
たまに父と顔を合わせたとき(ここが悲しい!)、父子の間で妖怪談義をし、父は自分に妖怪を描いた漫画を見せてくれたという。
妖怪だけが父と子を結びつけるものだった、とも言う。
「死化」というのは、自分が創作した妖怪なのだ…
やはり作家を身近に見てきた人の証言というのはインパクトがある!