マンガばっかり

マンガ批評

おおきく振りかぶって

【古本】おおきく振りかぶって 1〜4巻セット
★★★★★
ひぐちアサによる、気弱なピッチャー・三橋廉を中心にした野球マンガ
女性作家が描いた野球マンガなのだから… と甘く見て読み始めたのだが、予想は大きく外れた。
作家本人がスポーツ心理学を学んだ人だということもあって、スポーツを描いていながら「スポ根」ではなく、メンタル・トレーニングをこなすシーンも登場する。
魔球やら超人的な集中力、運動神経… で話を繋ぐのではなく、合理的に、科学的にストーリーを展開しようとしており、それが十分な説得力と感動を持って伝わるところはさすが。
野球マンガの歴史を塗り替えた作品だと思う。

女性の小説家が男性を描いて「うまい」と思わせることはほとんどないのだが、吉田秋生にはじまって、「本当にこの人は女なのだろうか」と思うほどに男性を描くのがうまい女性マンガ家というのがけっこういるように思う。
少女マンガが「男の子がスキ」ということを大きな起爆剤にして発展してきたためだろうか…
少年マンガも「女の子がスキ」を大きな力にして発展してきたはずだけれど、こっちの方はまともな女の子などはほとんど出てこなかったりするのである…
少年マンガを描く女性は多くても、少女マンガを描く男性は、今、ほとんどいないように思う。