マンガばっかり

マンガ批評

同棲時代

同棲時代 (1)
★★★★★
上村一夫による古典的名著。
作中に「できることならあなたを殺して私も死のうと思った/それが愛することだと信じ喜びにふるえた」という詩が出てくるが、昔、ラジオでこのフレーズを聞いて、「それが愛することなのか?」と疑問に思ったことを、今更ながらに思い出した。
なにもそこまで思い詰めることは… と言いたい気が、やはりする。
なぜ同棲のままでいるのだろうかと言えば、おそらく次郎が安定した仕事についていないからだ。
でも今日子の方はOLとして、けっこう働いていけているのだ。
それならそれでいいじゃないか、と思うのだけれど、今日では「問題ナシ」と思われるようなことでも、案外、当時としては障壁になっていたのかもしれない… 男は大黒柱というような意識…?
しかし、そういう見栄やらプライドやらのために、死ぬことによって結ばれようなんていうのは、なんだか倒錯しているというか、カッコつけすぎな気がするのだが、そのあたりは同世代ではないためか理解できないところだ。
しかし、そうした不可解な部分がありながらも、やはり傑作と呼ばずにはいられない何かがこのマンガにはあったように思う。
おそらくそれはロシア人の性格など何もわかってはいないのに、「ドストエフスキーは絶対だ!」と思えてしまうようななにものか、である…