マンガばっかり

マンガ批評

フラワー・オブ・ライフ

フラワー・オブ・ライフ(1)
★★★★★
よしながふみが現在「WINGS」に連載中のマンガ。
ホモっぽい先生、白血病の少年、チビデブ、仲のいい男子生徒たち、おたく…
こう書き出すと、登場する面々がいわゆる「キャラ立ち」した人々だというのが窺える。
しかし、そういうマンガなのかなぁと思って読み始めると、見事な肩すかしを食う。
いや、もしかしたらこれが肩すかしであることに気付かずに、キャラのおもしろさだけで読み続ける人もいるかもしれない…
しかし、そういうことはあくまでもサブなのだ。
そして、舞台は共学の高校で… となると男女の恋愛が描かれているんだろ、ということになりそうなのだが、実はこれもまるでないわけではないけれど、ほとんどこれもサブなのだ。
では、何が書かれているかというと、もっとリアルで普通な共学の高校ライフである。
例えばマンガに出てくる先生というのは、すごく生徒に歩み寄ったり、あるいはダメ教師、バカ教師であったりするのだが、「古墳というと、あぁ、私も思い出すなぁ…」と数コマに渡って延々と余談を語り出す「普通の先生」なのだ!
今までいろいろなマンガを読んできたけれど、これほど「普通」な先生が描かれているのは見た覚えがない(もちろん、不倫している先生だとか、イマドキのマンガっぽい設定もあるけれど)。
放課後の男女たちも、だらだらと噂話をしていたり、誰かをからかってみたり… と、きわめて自然なのだ。
みんながみんな恋愛ばっかりしているわけではないし、クラブ活動をしない子だって多いのだ。
みんなが塾に行っているわけでも、援助交際をしているわけでも、バイト三昧でもないでしょ?!
春太郎のお弁当の中身もしっかり描かれている。
で、お弁当のおかずが多すぎて友人にも食べて欲しいと言うなんて、こんなマンガが今までにあっただろうか?
息子の友人が訪ねてきたときの応対ぶり、ここもハチャメチャになりすぎたり、あるいは暗すぎたりで、どっちかしかなかった。
こういう普通の場面をよしながはさらっと描き、しかし、本当に普通で何もなければマンガにはならないので、しっかりメリハリをつけて、落ちをつけている。
その一方で、キャラ主義者たちにもそこそこの満足感を与えてもいるのだ!
恐ろしい!!
本当は★を6つくらい付けたいくらいだし、まだ1巻を読んだだけでここに書くのは早すぎるかも知れないけれど、ひさびさに出くわした問題作にして成功作。
これで春太郎が恋愛をしないで連載を終了させたとしたら、本当にこれはノーベル文学賞なみにすごいことだと思う!!