マンガばっかり

マンガ批評

それでも町は廻っている


★★★★★
石黒正数少年画報社の『ヤングキングアワーズ』という、失礼ながら見たことのない雑誌に連載中の作品。
女子高生がメイド喫茶でアルバイト… という、いかにも狙ってる風の設定だが、勘違いの天然少女がバタバタしっぱなしで、萌えもオタクもどこ吹く風という感じ。
福井県出身の著者が移り住んだ東京の下町は、八百屋のオジサンが作者に話しかけ、コンビニの店員も世間話を持ちかけてくるコミュニケーション天国。
何かとディスコミュニケーションばかりが指摘される21世紀の大東京に存在するこういう世界を描こうとしてこのマンガを構想したという。
舞台と思しき大田区蒲田界隈の感じは、かつてのバイト先でもあるのでよく知っているが、たしかにこの感じは大田区・品川区の風情がある。
21世紀の日本には都会があって田舎があって、でも、蒲田もあるのだ。
いや、都会だとかなんとか言っても、いわゆる都会なのは、六本木ヒルズ族と世田谷くらいであって、たいていの人は蒲田あたりに住んでいたりするのだ。
と言っても、いわゆる江戸っ子だの人情だのという寅さんっぽい下町ではなく、泥棒もいれば怪しい人物も徘徊するような下町だ。
実際、蒲田は事件が多かったし、メイド喫茶シーサイド(経営者は磯端ウキなるおばあさん=メイド長!)のような店もたくさんあった。
都市論的にも、このマンガの新しさとマトモさは評価されてもいいと思う。
人物もただのギャグ・マンガ的な類型的なものでなく、それぞれに個性と陰影を持っていて魅力的!
ギャグも夜中に1人で声を出して笑ってしまったくらいのセンス!