マンガばっかり

マンガ批評

ヴィリ


★★★★★
山岸涼子が「テレプシコーラ」の休載中に「ダビンチ」に連載したマンガ。
もちろんテーマはバレエです。
テレプシコーラ」がバレエ教室の娘たちの物語であったとすると、こちらはもっと母に絞った物語になっている。
若者は繊細でみずみずしく、傷つきやすい… なんていうことになあっているけれど、繊細でみずみずしくて傷つきやすいのはむしろオトナなんです。
なのに若者とは違って、ワタシは繊細なんですだの、傷つきやすいんですなんて言っても誰もカワイイとは思ってくれないし、それが免罪にならないことくらい重々承知しているからおくびにも出さない… だからなおさら繊細でみずみずしくて傷つきやすいんです。
それがオトナなんです。
…ということを知らしめるマンガであると思う。
まぁ、わからない人にはわからないだろうけどね。
テレプシコーラを描きながら、山岸の頭の中にもう一つ浮かんできてしまった物語を描いたものなのだろう。
こっちにはもっと生臭い金の話、愛と欲望の話、そして幽霊話もあるが、それでもあくまでも現実のマトモ世界に足っているところがオトナ山岸の本懐であろう。
ただ、テレプシコーラでもそうだったが、縁の下の力持ち的な存在である演出家や秘書… が主人公クラスの人々に比べて、いい人過ぎないか、とは思う。
だいたいこういうナンバーツーみたいな人達が、一番、小狡いことを考えていたりするもんだけどね…