マンガばっかり

マンガ批評

はだしのゲン


★★★★★
中沢啓治の名作。
今更ながらの通読…
広島でも長崎でも原爆資料館に行ったので、原爆のひどさについては、もう十分にわかっていたつもりでいたが、やはり自分の身に起こったことでない限り、わかることなんてないんだなと思った。
初めは、ストーリーの展開の早さ、ゲンの父がアプリオリ反戦を訴え、警察に連れて行かれるあたりに、どうにも納得できない感じがしていたのだが(このあたりはほぼ作者自身が経験したことのようだ)、原爆が落とされ、盗んだり盗まれたり、だましたりだまされたりしながら、日々を生きていくのがゲンなのか、と今更ながらに思った。
なんとなくイメージされていた被爆者の悲しい話、可哀想な人達の話というだけに終わっていないのは誠にうれしい驚きであった。
もちろんゲンを初めとする登場人物がわかりやすすぎる気はするし、そこで展開される政治論や戦争責任論も稚拙な感じはする。
しかし、こんな本が今も堂々と書店で売られているというのは、日本も棄てたもんじゃない!
あまりにもインパクトの強すぎる「原爆マンガ」のイメージは切り離して、若者たちはどう生きるべきか、ということが描かれた青春マンガとして読み継がれて欲しいと思う。