マンガばっかり

マンガ批評

YASHA


★★★★★
吉田秋生の長編マンガ。
読み終わってみれば「エンターテイメント」としか言いようのないマンガである。
ただ、1ヶ月前に読んだ岩明均の『七夕の国』を、ただのエンターテイメントでしかないと思うのとは、どこか違う気がする。
同じ現代日本を舞台にした作品であり、リアルな部分、マンガめいた部分はそれぞれにあったが、吉田の方には、人類に対する幻滅と期待とでもいうのか、人類というものが負ってしまった宿命について考えさせるところがあるのが違いだと思う。
何もこのマンガが遺伝子操作によって生まれた双子の兄弟である静と凛を描いたアクション・サスペンスものだから、人類の未来にも関わっていると言いたいのではない。
例えば普通の男子高校生、女子高校生であっても、どうしても存在してしまう「人類について考察してしまう瞬間」とでもいうものを、いつも吉田はきちんと捕らえて描いているように思うのである(ことに近作の「海街diary」を読めば、これは一層明かなのだが…)。