マンガばっかり

マンガ批評

銀のアンカー


★★★★
三田紀房による就職活動版「ドラゴン桜」。
就職活動中の2人の大学生をヘッドハンターの白川が指南するという就活マンガ。
たしかに就活というのは、解釈のしようによっては面白いものだと思う。
一流大学というのが内定のための絶対のパスポートだというわけでもなく、美人だったり、一芸があったり… というのも絶対的なものではない。
だからこそ学生たちは悩むのだが、それが自由であることの面白さなのだな。
学生たちは、人生で始めて出会う自由というものの恐ろしさと面白さに向き合わされ、それでアタフタするのだろうと思う。
物語は最初のうち、大学生協あたりで売っていそうな「マンガでわかる就活のコツ」といった感じで、概念が先走って人間が人間として動いていない感じがあったが、だんだんと概念だけでなく人間が動き始め、3巻になるとドラマになってきたという感じがある。
ただ、このマンガに描いてあるとおりをマネる学生がいても、それはダメだと思う。
おそらくは就活における「本当のこと」が、ここには描かれているかも知れないけれど、それが絶対でないのは最初に言ったとおりで、同じ基準での優劣を判定する大学受験とは決定的に違うところなのである。
これは諸刃の剣で、だからこそ物語を東大受験以上に面白くすることもできるし、また、鉄則がない故に物語が破綻することにもなるのだと思う。