マンガばっかり

マンガ批評

高校球児ザワさん


★★★★★
三島衛里子が甲子園出場も果たす野球の名門・日践学院の女子選手・都沢理紗の日常を描いた作品。
誠に新しい視点のマンガである。
プロ野球選手・水原勇気にはじまり、「おおふり」では女子監督、そしてついに女子高校球児の誕生!
しかし、斬新さは彼女が試合でどのように活躍したかということではない。
そんなことはほとんど全く描かれることがなく(高野連の規定によって女子は試合に出場できないし…)、練習の時、どのような場所でどんな着替えをするか、教室内での彼女の素行、周囲の女子・男子の視線、都沢家のたたずまい等々、あまりに細かすぎる雑多なこと、しかし、運動部に関わった人にはあるあると思えるようなことがたくさんに詰まったマンガであった。
ことに女性作家であるからなのか、女子としてのザワさんに関するディテイルはなかなかいいと思う。
真っ黒に日焼けして、女子同士でつるんでショッピングに精出すことなども皆無の彼女だが、実は自分のことを「理紗」と呼んでいることなどなど、セックスの壁、ジェンダーの壁があちこちに立ちはだかりながら、またその一方で、それらの壁がやすやすと打ち破られていたりするというリアリティが誠にいいと思う。