マンガばっかり

マンガ批評

イキガミ


★★★★
間瀬元朗による「魂揺さぶる究極極限ドラマ」!
とてもよくないキャッチコピーだと思う。
舞台は、命の大切さを実感させるために小学校1年の時に子どもたちは皆注射を打たれ、18歳を過ぎると1000人に1人が死ぬ世界。
死の24時間前に「イキガミ」を提示されるのだが、彼らが残りの時間をどう過ごすかということが「イキガミ」の配達人である藤本の目を通して描かれている。
最近よくあるタイプのマンガであるが、アマゾンの書評をざっと読んでみると、5つ星をつける人もあり、1つ星の人もあり… で賛否両論。
いや、むしろ押しつけがましい感動の押し売りということで、「否」の人の方が多いように思う。
「ぼくらの」とかと似たような感じで、この手のものは大嫌いなのだが、1巻からだんだん読み進めていくと、案外、悪くないと思うようになってきた。
というのも、「イキガミ」は戦時中の「アカガミ」のもじりであり、「国家繁栄維持法」は「治安維持法」、同法の受け入れをめぐる闘争も安保闘争・大学紛争として描かれているからだ。
この手のマンガは、近未来デストピアとして描かれることが多いが、これはそのようなタッチでありながら、実は近過去デストピアを読者に向かって突きつけているという点でスタンスが違っていると思うのだ。
こんなバカげた法律ができるわけがないと思っている人に問いたいのは、国家のために死ぬことをよしとする時代が過ぎてから、まだ半世紀しかたっていないということだ。