マンガばっかり

マンガ批評

先生!


★★
河原和音の(たぶん)代表作。
登場人物は皆、明るく元気で正義感が強くて、とても健康でいいのだけれど、やはり本質的なところで甘すぎると思う。
伊藤先生と響の恋の話なのだが、まぁ、世の中にはこのように先生と生徒の立場を越えて清く美しく愛し合っている人もいるのだろうと思うし、それが非現実的だとも思わないし、道徳的に咎めようなどとも思わない。
ただ、教員アパートがあって、そこにも生徒が入れ代わり立ち代わり出入りし、時には夜を明かしてしまう… なんていうのはほとんど「とんでも設定」に近いと思うし、そんなアパートの前でキスしたり、街中でいちゃついたりとか、そんなストーリーがOKならばなんだってOKになってしまう!
先生と生徒の禁断の恋を、スリリングに描くことなど、作風からして河原はできなかっただろうし、する気もなかったと思う。
それなら先生と生徒などという関係でストーリーを作るべきではなかったのだ。
せいぜい対立する学校の先輩と後輩というところではないだろうか。
そもそも、いろいろ屈折しながら生きてきた伊藤先生も、ただただ真直ぐで、そのために危ういところのある女の子の告白など聞き入れるはずがないのだ。
読み進めて、先生がきちんとした人物であることがわかればわかるほど、なぜこの子を恋人にしたのかがわからなくなる。
やはり「魔がさした」というだけでは?