マンガばっかり

マンガ批評

JIN −仁−


★★★★
村上もとかによる人気コミック。
21世紀の外科医が幕末の江戸にタイムスリップし、勝海舟坂本竜馬らと共に生きていく物語。
で、吉原の遊女、そして武士の娘・咲も南方仁をひそかに慕い… って、これはウケルだろう。
実際にウケているようなのだが、本当によく作り込んであって職人芸を感じた。
ただ簡単に説明したとおり、今までの様々なドラマのおいしいところ、ブラックジャック、タイムスリップ、新撰組を合わせただけじゃんか、というような憎まれ口が聞きたくなるのも確かなのだ。
もちろんいいマンガなのだけれど、どこかで見たマンガたちが合わさった予定調和感というのがある。
例えば、私が今、江戸にタイムスリップしても、咲さんとうきうき生きていくことなどできないと思う。
わざわざ「江戸」なんていう時代に行っているのに、あまりにも主人公が融け込めすぎていて、「それじゃぁ、もとの世界に戻ってこなくていいじゃんか!」と思ってしまうのだ。
もちろん江戸の現実の中でいろいろ悩んでいるのだが、それは江戸時代の人たちが悩んでいるのと同じレベルでの悩みであって、21世紀人が江戸に行って感じるような悩みがほとんど描かれていないところに、どこか物足りなさを感じるのだな。