マンガばっかり

マンガ批評

べしゃり暮らし


★★★★★
森田まさのりによる漫才をテーマにしたマンガ。
漫才をここまでしっかりと描いたマンガがあるかなぁ、と考えてみたが、思い出せなかった。
漫画家漫画は隆盛だが、漫才師漫画がマイナーなのは、おそらくマンガの中に出さざるをえないネタを書くのが大変だからではないかと思う。
球漫画ならホームランの絵など簡単に書けるが、「だれもが笑ったネタ」というのを漫画で書くのはシンドイと思う。
しかも毎回毎回同じ「だれもが笑ったネタ」を使う訳にもいかないので、熱血根性漫画を描く努力とともに、ほぼ毎回、ギャグ漫画を描くくらいの努力が必要とされるわけである。
この漫画が優れていたのは、なんといっても、この作中の漫才がうまくできていたからだ。
ただ、並行して起こる様々な事件が、どれもあまりにも美しく片付きすぎているのが、ちょっと気になる。
どんな世界でも、ガマンのならないような決定がなされることはあるだろうが、そんなことにイチイチ反応していたら体が持たないし、仕事なんて続けられるはずがない。
どんな正義感だって、いろいろ妥協しながら生きているものだ。
世の中はホワイトとブラックで成り立っているのではなくて、半分以上はグレーの世界のはずなのに、そういうゾーンが存在しないかのように書くのは、それはちょっと違うかなぁという違和感が残った。