マンガばっかり

マンガ批評

バニラスパイダー


★★★★
阿部洋一の青春ホラーSF。
ラストはイマイチわからなかったが、3.11以降の世界に生きる今となっては、本当にヒトゴトじゃないマンガであった。
或る町が人喰い宇宙人に侵略され、人々は気付かぬうちに姿を消していく。
そこを別の宇宙人から力を授かった少年が戦いに出向くというストーリーだ。
少年・ツツジはたった1人で戦っていると思っていたが、バタフライ団に出会うと、リーダーから「仲間同士で団結してこの町を守ろう」と誘われる。
しかしツツジはこの町を守ろうという気にはなれない。
身の丈に合った部分しか助けられないと言って誘いを断るのだ。
これは最近の風潮に酷似していると思う。
みんなで助け合おうだの、募金しようだの、税金を払おうだのという声がかまびすしい。
デモをしようとか裁判をしようとか、そんな声も聞こえてくる。
しかし、自分に何か大きなシゴトができるとも思えない。
みんなのための活動と言えば聞こえはいいが、ただの人柱、ただの道具に使われるだけではないのか?
何をするのも「させられている」気にしかなれない。
となれば、自分の身の回りの者を守るだけ…
作者がこんなことを考えていたかどうかはわからないが、最近の事件や風潮と、それに対する思い(私だけ?)にあまりにも似すぎていないだろうか。
あと10年ほどたてば、こんな感想とともに名作として語られることもあるのかもしれない。