マンガばっかり

マンガ批評

謎のあの店


★★★★★
松本英子によるエッセイ漫画。
「くそ、やられた!」という気がした。
帯には「孤独のグルメ」や「花のズボラ飯」などの原作で知られる久住昌之の「松本英子さんは、女のボクです!」という文字があったが、まさにそのとおりだと思う。
街を歩いていると、気になる店というのはどうにもある。
ちゃんとお客さんが入るんだろうか、昭和のまんまなんじゃないか、こんな山の中になぜ… といった店だ。
松本はそういう店に勇気を持って入っていく。
ものすごいことがあったり、そんなにすごいこともなかったりと、そこは実録ものだから様々なのだが、このマンガが傑作だと思えるのは、その描き方が上品なところだ。
テレビなどだと、芸人たちがうわーっと店になだれ込んでは大騒ぎをして、必要以上に盛り上げたり盛り下げたりするのだが、そういうこれ見よがしのところがない。
ことに「女であること」を逆の意味で生かして、必要以上に下品に振る舞うような(森三中!)ところがない。
いくら仕事のためだとは言え、ドキドキする時はやっぱりドキドキするだろうし、おいしければおいしいと思い、何も感じなければ何も感じない。
そういうあたりまえの喜怒哀楽をきちんと感じ、きちんとマンガに表現しようという意志が透徹しているところが素晴らしい!
(No.755)