マンガばっかり

マンガ批評

アルキヘンロズカン


★★★★★
しまたけひとによる四国お遍路漫画。
直前に読んだ「う」は、どんなところでどんなウナギを食べても批判することはなく、全てをアゲアゲで描いていたが、こちらも同じく取材に基づいた作品でありながら、お遍路の裏の裏側まで描こうという力作であった。
お遍路といっても、実際に経験していないので、四国の土地柄や集まる人々のキャラなど、勝手に想像していたが、考えてみれば当たり前のことかもしれないが、ある人は御仏の心に通じるようでもあれば、また、とてもお遍路の名にはふさわしくないというような人もいる… そういうことを漫画という媒体でしっかりとやってくれていたと思う。
漫画家への道を諦めたいようで、諦めたくないという、おそらくは著者自身の思いも、私小説的に織り交ぜながら、行く先々で聞いた話やら噂話なども織り込み、あぁ、こんなふうなんだなぁ、と思わせられた。
漫画という曖昧な立ち位置の媒体だからこそ、ルポルタージュや報道ではできない領域に入り込めた作品だったように思う。
大ヒットするような作柄でないのは仕方がないにせよ、よい作品であったと思う。
(No.780)