マンガばっかり

マンガ批評

いちえふ


★★★
竜田一人による原発作業員ルポマンガ。
アマゾンのコメントを見ると「これぞ現場! GJ!」という、わりに素朴な絶賛コメントが多かったような気がする。
もちろん、現場感にあふれまくっていて、冬でも汗をかくような職場、危険な割に給料がそれほどいいわけでもなく、本当に「ご安全に!」と言いたくなるような職場であって、そんなところにまで肉薄したこのマンガはとても貴重だと思う。
ただ、作者が「政治性抜きにありのままを描いた」というのは誤りで、これはとても政治的なマンガで、そのことを自覚していないことについて批判したい。
原発作業員にも日常はある、と言いたいのだろうけれど、こうやって「日常」は傷ついていないのだとばかりに安全神話に騙され、50数機にも及ぶ原発が作られ、事故が起こったら起ったで今度は作業員に作業させ、これを何十年も、何十億だか何兆だかの垂れ流しをして、「これもしょうがないよね」と囁きあえというのだ!
これは「普通」とは言い難い状況だと思うし、これを「普通に受けとめよう」というのがメッセージであったとすれば、これほど政治的なこともないように思う。
講談社がこういうものを載せる一方、ビッグコミック小学館)では、「美味しんぼ」が鼻血問題を取り上げている。一ツ橋VS音羽の戦い、というところだろうか?
(No.833)