マンガばっかり

マンガ批評

ちーちゃんはちょっと足りない


★★★
阿部共実の「このマンガがすごい!2015」のオンナ編でトップだったマンガ。
たしかに新しいテーマで、新しい切り口だとは思う。
はじめは「足りない」ちーちゃんのパワーが目立つギャグマンガだったものが、だんだん深刻度が増し、これがナツの物語であったことがわかってきて、そのあたりは見事だと思うのだが、それにしてもちーちゃんを都合のよいバカに仕立てている所はあまり買えない。
あずまきよひこよつばと』はダメだが、ヨシノサツキばらかもん』のなるはいいと思う。
よつばは、都合がよく子どもすぎて、何もかもわからない存在にしては妙にオトナ社会に対する感度がよかったり理解があり過ぎている気がする。
それに比して、ナルは徹底的に子どもで、本当に何も期待できないのである!
たまにあたることもあるが、それはほとんど確率の問題であたっているだけのまぐれあたりである。
ちーちゃんは、この「便利な子ども」を、「便利なバカ」に移したのだと思う。
子どもは自分の欲望に正直なので、あれも欲しいこれも欲しいと利己的に考え、他人のことなど考えない。
つまりエゴイスティックなところがあるのだが、そういう負の側面に目を向けようとせず、子供らしさ、バカさ、つまりは「純粋さ」だけを引き出そうとしている。
大人の価値観では「純粋」に見えても、それは要するに知識がないだけのことであって、道徳的に「よい」からそうしているわけではないのだ。
このマンガにおけるちーちゃんは、お金を持っていてもナツに渡してしまう。
自分だけ利益をむさぼりたいなんて考えないからだとでも言わんばかり。
また、オグジマのことが大好きなのだが、決して独占したいなどとも思わないらしい。
そういうあたりがどうにも都合がよく、うさんくさい気がする。
本当のバカはもっとシビアで徹底的なものだと思う。
本当の子どもがもっとシビアで徹底的であるように…
(No.864)