マンガばっかり

マンガ批評

ゆうれい談




★★★★
山岸凉子による怪談。
ゆうれい談というものはやはりいいものだなと思う。
なんだそれは、と思われそうだが、錯覚だろうが幻覚だろうがなんだろうが、なるほどなぁ、と考えさせ、感じさせられるものがあるからだ。
この本には山岸が自分や知人の体験、読者からの体験をもとに描いたものだが、いろいろ考えさせる。
幽霊なんているわけない、といえばそれまでなのだが、三途の川というのを臨死体験者が多く見たと証言することを思えば、それは死を経験する直前の人が見る夢のようなもので、死の直前に走馬灯のように自分の人生が思い出されるという、やはりこれも極限的な事故で一生をとりとめた人たちが証言することと同じく、人間の側の生態的な反応なのだろうと思う。
なんのためだか、なぜなのだか、毛頭わからないが、何かの感覚が死者の思いやら生者の思いやらを嗅ぎつけて予知してしまうことというのは、やはり通常の科学とは別の科学的な根拠によって成立しているんじゃないかな、と思う。
湖のそばでは怪奇現象が起こりやすいのではないか、という山岸の直感も、ふーん、なるほどな、と思わせるもので、まぁ、この手の「科学」が真に説得力を持つまでにはあと数千年くらいかかるかもしれないにもせよ、やはり興味深いと言わざるを得ない。
(No.952)