マンガばっかり

マンガ批評

先生白書


★★★★
味野くにおが冨樫義博のアシスタントを務めた際のエッセイマンガ。
当然、描きたいけれど描けないこともあるのだろうとは思うが、なるほどなぁ、と思った。
どうも冨樫は気さくないい人のようである。
幽☆遊☆白書』の連載も最後の方はほんとにしんどくて、やる気もなかったのだろうと思うが、内面の苦労をアシスタントに語ることもなく、表面的には冷静で、ひょうひょうとしていたようだ。
しかし手塚治虫に関わったいかなるアシスタントも編集者も、よくもわるくもこうしたひょうひょうとした様子などを語りはしない。
現役マンガについて書くのと、逝去した「神様」を書くのとでは、おのずと違ってくるだろうし、手塚の場合は、ぶっ飛んでいればぶっ飛んでいるだけ評価(?)されるところもあるので、エピソードを抑制するどころか、むしろ盛って語られるところもあるのかもしれない。
しかし、それにしても現代マンガ家とは、自分と向き合い、世の中と向き合うよりも前に、人としてきちんと編集者やアシスタントにも向き合うというバランスの取れた常識人・社会人・組織の中の人として振る舞う必要があり、現に、そうした人のみが、このビジネスとしてのマンガ社会の住人でいつづけることができるのだと思う。
編集者をだまして行方をくらますとか、編集者を殴る/殴られる… というような話とは無縁な平和な現代を、嘆いたらいいのか、あるいは安心したらいいのか、いろいろ考えさせられる本であった。
(No.1012)