マンガばっかり

マンガ批評

ペリリュー

★★★★★

武田一義による軍記もの。
日本軍がペリリュー島でどう戦い、どう生き抜いていったかを綴るマンガ。
実話や取材に基づいての作品だけにリアルであり、その現実は極めて恐ろしい。
ただ登場人物は簡素化された三頭身だ。
これは三頭身であって正解だったと思う。
この上、マンガまでがリアルに、人間人間して描かれてしまっては、息をつくこともできなくなりそうだからだ…
それにしてももう無理だと分かりつつも日本軍の誇りと目的を失わずに戦おうとする上官、もうアメリカにでも何にでも投降してしまいたいと思う兵士、なんとか生き抜いてやりたいと思う兵士、自分だけが生き残ればいいと思う兵士、自分などはいいので誰かのために悔いのない生涯を送ろうとする兵士…
悲しいことに、どの兵士にも自分はなりえたな、と容易に想像ができ、限界状況における人間というものの可能性と限界、自分という存在のオリジナリティのなさに辟易とさせられる。
そういう意味でも、戦争とは何か、だけでなく、人間とは何なのか、を考えさせる傑作であると思う。

(No.1079)