マンガばっかり

マンガ批評

零落

★★★★

浅野いにお、による漫画家マンガ。
自身の思いも入っているのではないか、とも言われているようだ。
苦く切ない。
売れればいいわけではないが、売れなくてはどうにもならない。
売れることを重視し過ぎたら、作者にとって、それはあまり気持ちのいいものではないだろう。
研究者などというものをしていると、評判になる研究もあれば、評判にならない研究もあり、しかしマイナージャンルではあっても、熱烈に読んでくれる読者がいてくれれば、挑んだだけの代償はしっかりいただいていることになる。
しかし、マンガという、アートであれエンタメであれ、そういう創作行為であれば、描いてくれてありがとう、描いてくれたことによって少しだけ世の中が前進した、という風に思ってもらえることは稀であり、そこにはなかなか葛藤というものもあるのだろうと思う。
今はネットや同人誌という媒体であれば、誰もが描けるし、発表できる世の中だ。それはそれでいいのだが、しかし、責任もって漫画家を指導し、よりよいものに作り上げていこうとする人たち、そこで描かれたものがいいものなのか、わるいものなのかを判断する人々がいることによって、マンガというものの質があがっていることは確かであり、そういうサイクルは大事にしていかないといけないように思う。
新聞がなくなって、一般人がSNSで投稿するものだけがニュースになる時代はおそろしいが、それと同じようなことにもなるかもしれない。
現在のようなマンガ・アニメ業界が、正解であるとは言えないにしても、このシステムが崩壊してしまったら、それはそれで恐ろしいような気もする…

(No.1110)