マンガばっかり

マンガ批評

湯神くんには友達がいない

★★★★★

佐倉準のマンガ。
人気マンガであることは知っていたが、タイトルからして、どこかのいけてない文系男子かなにかの話かなと思っていた。
が、主人公の湯神は野球部のエース。
勉強もそこそこできたりする。
たしかに落語オタクではあるが、それは本質的な問題ではなさそうだ。
この人は友達ができないのではなく、友達を作る必要性を感じていない、つまり「友達がいない」だけなのだ。
では、どれだけのど変人かというと、きわめて日常的に日々を生きている。
しっかりと両親や祖母、妹まで描いている。
となりの席の綿貫ちひろは、もっと普通のいい人であるが、彼女と湯神も、付かず離れずで、そりが合わないながらも、なんだか共存共栄していたりする。
文化祭があり、体育祭があり、甲子園への戦いがあり、と、お約束の高校青春マンガのネタを、たんたんと綴っていくが、同じようでいて、他のマンガとはちょっとだけ違っている。
そもそも、全くもって新しい世界を、全くもって新しい方法で描くマンガというのは、案外と簡単にクリエイティブになれる。
しかし、日常漫画の世界に、新しい方法で楔を打ち込むのはなかなか難しい。
楔を打ち込む、などというと、なんだかものものしいが、あまり楔を打ち込むという気概もなく、てへへっと打ち込んでいるところがスゴイと思う。

(No.1143)