マンガばっかり

マンガ批評

群青にサイレン

★★★★

桃栗みかん、の野球マンガ
桃栗というのは「いちご100%」の作者・河下水希の別名義のペンネームで、15年ぶりの使用だとのこと。
連載は女性誌のYouだが、休刊後はジャンプ+に連載。
いわゆるジャンプっぽい男の子青春マンガではなく、部員同士のいらいらやきもきしながら部活動を続けることを主眼にしており、だから女性誌に連載したのだという。
たしかに主人公、そして副主人公は、従兄弟ながらも、お互いがお互いを羨み、愛憎半ばしあっている関係で、勝利を目指すだけのスポーツ漫画にはなっていない。
ライバル校の選手がやけに優しかったりするあたり、ファンタジーだろ、というところもあるが、野球はちゃんと描かれており、スポーツ漫画好きの男子が読んでも、受け入れられると思う。
ただ、個々の問題が、いわゆる「問題」を抱えすぎている気がする。
息子をひいきしてほしいと思って監督と関係する母だとか、うますぎるためにコミュ力のある選手からイジメを受ける少年野球選手だとか、まぁまぁ、そういう人がいないわけではないにしても、それぞれが抱えすぎているし、そんな人ばかりの野球チームというのは、気持ち悪すぎる。
おおきく振りかぶって」では、三橋が、そんなトラウマを抱えた人物として設定されていたが、それだけで生きている人間にはしていないし、実際、どんな人もいくらかのコンプレックスやらトラウマを抱えながら生きているのは事実で、そのあたりのバランスがちょうどいいと思う。
ストーリー作りのうまさは、さすがジャンプで鍛えられた人だなとは思うものの、リアリティよりも物珍しさ、話題性… といった方向を重視してしまうあたり、これはジャンプ的世界の悪い影響ではないかと思う。

(No.1147)