マンガばっかり

マンガ批評

レイリ

★★★★

岩明均原作、室井大資の作画による歴史もの。
武田信勝の影武者として活躍する少女レイリ(霊里)の物語。
原作には構想12年かかったとのことらしいが、なるほど歴史の大きな流れ、そしてその中にいる才能について、エンターテイメントとしては勿論だが、歴史ものとしても興味深い感慨を与えてくれるマンガであった。
6冊という、この手のものとしてはスッキリと収まっている感じだが、武田信勝とレイリの仕事としての交流、たとえばレイリが岡部丹波らにむかって戦術について滔々と述べ、信勝の受け売りなのだと語るシーンがあったが、信勝とレイリが戦術について、それほどに語り合い影響を与えられるというようなシーンは描かれておらず、説明不足な感じがした。
また、この二人には、職務や身分を越えた友情、というよりも愛情ともいうべき空気も流れているのだが、そのあたりも、もう少し描き込んでもよかったと思う。
岩明の『ヒストリエ』でもそうなのだが、歴史の大きな流れを描きたいためか、一人一人の人間の抱えるドラマには焦点が当たりにくく、歴史ものとしてはいいのだが、愛やら勇気やら戦いというあたりのエンタメとして必要なものに対する比重が少なくなってしまって、それが小ヒットに留めてしまっているのではないかと思った。
wikipediaによれば、2019年に第3回さいとう・たかを賞を受賞しているとのことだけれど…

(No.1227)