マンガばっかり

マンガ批評

消えたママ友

★★★★★

野原広子のリアル漫画。
『このマンガがすごい2021』で知ったのだが、手塚治虫文化賞(短編賞)も受賞したようだ。
幼稚園のママ友だった有紀ちゃんが子どもをおいて疾走するということから、残された3人たちもうずうずさせられるという物語。
偶然に有紀ちゃんと見かけたことからママ友4人が出会うことになるが、そこで有紀ちゃんは全然幸せなどではなく、子どもを抱くことさえできなかったことを告白する…
実は、ひょんなことからパチンコにはまり、借金も重ねて家から追い出されていたのだが、近所でもそうした家があったりすることから非常にリアルであった。
こんな風に紹介すると「昔はこんなに家庭は荒れていなかったし、子どもも素直だった!」と保守系の政治家などが語り出しそうだが、それは有紀ちゃんのように「逃げる」という選択肢を選ぶことができなかったからであり、逃げたところで生活手段のなかった時代の奴隷制を懐かしんでいるような話だと思う。
こうしたマンガを読んだからと言って逃走者が増えるわけでもなく、また減るわけでもないだろうが、よかれと思ってやっているあなたの行為が深刻なハラスメントかもよ、と気付いてもらうにはいいキッカケになるのかもしれない。

(No.1239)