マンガばっかり

マンガ批評

ひらやすみ

★★★★★

真造圭伍の作品。
ネット等で評判が良いので買ってみた。
作者については、これまでに『森山中教習所』や『ぼくらのフンカ祭』などを読んでいたので知っていたが、ちょっとガロ系というか、オルタナ系といった感じで、そこまでよいとは思えていなかったのだが、『ひらやすみ』は本当にいい!
ほのぼのマンガとも言えるが、そうそうほのぼのでもないし、みんないい人というわけでもない。
阿佐ヶ谷が舞台という微妙さが、ほとんどすべてを物語っているような気もする。
世田谷ではないし、吉祥寺でもない。
だからといって川崎やら春日部でもないという感じ。
大学時代によく行った書楽も登場していたが(今、調べてみたらもっと遅くまで営業していた書原は閉店していた)、深夜までやっているからと言って、どこぞのコンビニやらツタヤのような、ベストセラーと雑誌しか売っていないような店ではなく、ちゃんと売れ行きよりも中身で勝負するような本も売る本屋だった。
そりゃ熊谷姉妹もねじめ正一も、おっと阿佐ヶ谷姉妹も、育つだろうという、そういう町である。
大学も『ブルーピリオド』でおなじみの藝大ではなく武蔵野美大だ(『ブルーピリオド』は好きですけど)。
どうしても、世の中を動かしているようなイケイケやら、有象無象やらばかりが取り上げられてしまう我が日本国だが、ふざけんなよ、そうじゃない人だってしっかり生きてるし、ハロウィンなんて気恥ずかしいし馬鹿らしいけど、まぁ、ちょっと行ってみて、後悔して、でも、まぁ、それもいっか、と思って書楽で立ち読みしている人もいるんだぞ、ということを今さらながらに知らしめ、本人たちにも「それでいいんだぞ」と再確認させるというよい漫画であった。

(No.1328)