マンガばっかり

マンガ批評

くちべた食堂

★★★

梵辛のマンガ。
こういう方向に行く話なのだとは思わなかった!
味はいいのに口下手な「店員さん」と、常連だが、妙に口下手な教員の「お客さん」が、もどかしくもシスターフッド(?)を静かに展開するというマンガ。
メインの二人が女性で、柳先生の教え子も女子という世界で、ほぼ男性は出てこないし、色恋の話もほとんど出てこないのだが、少女漫画的な世界であるという気もしない。
かといって萌えを意識したような感じでもなく、こうした世界観は、けっこう広がっているのかなと思った。

誰が見ているとも思えないブログだが、これまで初年は毎日更新、その後は週1更新を続けてきた。
コメントを書き溜めていたから、定期的に更新してこられたのだが、今回、ついにストックが尽きてしまった!
マンガは、相変わらず、ほぼ毎日読んでいるのだが、なぜそういうことになったかと言えば、マンガを連載する媒体が雑誌からネットに移行したからだと思う。
週刊や月刊のマンガだと、載せるマンガの数に上限があるため、アンケートなどの結果から「打ち切り」という決断を下されることが多々あった。
今も、人気マンガ誌などだとそうなのだろうが、今は人気マンガ誌のWEB版への移行、個人的なSNS投稿なども単行本として刊行されることもあるので、「打ち切り」ということが少なくなっている。
したがってマンガの冊数は増え、毎日のようにマンガを読み続けていても、新しい作品に出会う機会は減っていく、ということなのかと思う。
「なんで打ち切りなんだ!」と怒ることは少なくなったが、「まだ続いているんだ…」と思うことが多くなったということなのだろう。
今後は、紙媒体のマンガを読みながら、あれこれコメントをするのでなく、ネット媒体で、或る程度の長さまで読んだマンガについてコメントをする時代になったのだろう。
もっとも、それだと読めるマンガの範囲(課金しない限り)が限られてしまうことになり、それはそれでメンドクサイな、と思う。
まぁ、誰が読んでいるわけでもないブログなので、しばらくの休載の後、またゆるゆると復活することになるかと思う…

(No.1412)

富江

★★★★

伊藤潤二の怪奇マンガ。
1986年に第1回楳図賞に佳作入選しデビューのきっかけになったのがこの「富江」。
以来、富江シリーズを書き綴っているとのことだが、読んだのは上下2分冊になる2011年の傑作集。
きちんと読んだのは初めてだが、富江はこれまで映画が8本あるのだという。
ホラー漫画に徹した仕事だが、ファンはきっちりとついているのだなと思う。
こんなことあるわけないな、と思いながらも、全700ページに及ぶマンガを読んでみると、だんだん「そういう世界」の方が自然なように思えてくるから怖い!

(No.1411)

イチケイのカラス

★★★★★

浅見理都による地方裁判所の第一刑事部(略してイチケイ)の裁判官を中心に書かれた法律マンガ。
クジャクのダンス、誰が見た?』を読んで、こんなマンガも描いていたんだな、と思って手に取った。
作者にとっては初の連載だそうで、それだけにちょっと読みにくいところなどもあったが、とてもよい作品だったと思う。
日本では裁判ものの作品もないことはないが、お涙頂戴の方が先になってしまって、なかなかリアルな法廷論争が登場しないのだが、ここではキチンと描かれていてよかったと思う。
フジテレビ系列でのドラマ化、そして映画化もなされたようだがマンガはなんと4巻で終了!
このクオリティからして打ち切りということではなく、法律事務所などにも教えを受けながらのマンガ創作が大変すぎたための自主的な連載終了だったのではないか、などとも思ってしまう。

(No.1410)

十字架のろくにん

★★★★

中武士竜のマンガ。
小学校時代に強烈ないじめを受け、両親を殺され、弟を植物人間にまでされた漆間俊が高校に進学し、その5人に復讐し死に至らしめようというストーリー。
設定はよくある感じだし、こんなにトントン拍子でできるわけはないと思うし、俊を慕う東千鶴ちゃんが、そこまで自分を犠牲にして復讐に関わってくるとも思えない。
そのあたりはエンターテイメントということでお許しいただくとしても、比較的高く評価したのは、俊が元日本軍で人をどう殺すかについては通じていたという祖父と、両親が殺されてから同居して教えを受けていたこと。
そしていじめの首謀者たちを殺す方法が古今東西の拷問方法を用いてのものだといったあたりの用意周到さ、そしてラスボスである至極京が、人をいじめることの楽しさを布教し、その快楽から逃れることが出来なくなったということの変なリアリティのためだ(警察を巻き込んでの旭川でのいじめ惨殺事件など、マンガよりもマンガっぽいというような事態ではないかと思う)。
もちろん、こうして殺人図鑑のようなものを作って殺人を正当化しようなどということはさらさらないのだが、人間というのはこうしていろいろな手段を使って人を殺めてきたのだなということを感じさせるという意味で、興味深いと思った。
4巻まで読んだところで、残るは2人というところにまでなったコスパ・タイパ展開だが、至極京については十二分に紙幅を要するのではないかという気がする。

(No.1409)

翼くんはあかぬけたいのに

★★★

小花オトが「裏サンデー」に連載している人気マンガ。
長野県出身の少年が高校進学のために上京し、表参道にあるシェアハウスで生活をする話。
イケメンなのにセンスがまるでなく、同居人や東京のオシャレな文化に憧れ、また拒否反応を示すというギャグ漫画。
こんなやついないだろ、と思いながらも、今風のギャグ漫画かと思って勉強のつもりで読んでみた。
ギャグなので、ぶっ飛んだ設定をするのはいいのだが、リアルが担保されてこそのギャグだと思うので、もう少し現実的なこと、いくらシェアだからと言って表参道でこんな部屋を借りたら100万円くらい(サイトで検索)するようなので、そういう足腰部分のあたりを整理したうえでのオシャレなりなんなりをしてほしいかな、とは思った。

(No.1408)

恋せよまやかし天使ども

★★★★

卯月ココのマンガ。
『このマンガがすごい2024』で上位にランクインしていたことから読んでみた。
美少女と美男子、実は、内面がともに漢気がありすぎる… というギャップもの。
そこまで驚くべき設定でもないし、展開もおおむね予想のできるものではあるのだが、あの手この手をやりつくした少女漫画界では、ちょっと歩を進めた感じはあるかと思う。
3巻まで読んだところだが、二神というかき混ぜ役(?)の男子キャラも登場して、いい感じに動いてきたと思う。
とはいえ「どうして狭い地域内で、お互いに外で会っているというのに、学内の誰にも会うことがないのはなぜ?」などとは思うし、「それなのに二神には決定的な場面を目撃されたりするのはなぜ?」とも思うのだけれど、そのあたりでもう少し納得できるようになれば、さらにいいと思う!

(No.1407)

四十九日のお終いに

★★★

田沼朝の短編集。
『いやはや熱海くん』がとてもよかったので短編集を買ってみたのだが、習作という感じであった。
「普通」では片づけられないマンガを描こうという意欲は感じられるが、独特の画風も災いしてか、男なのか女なのか、高齢なのか若年なのかがわかりにくい。
そういう先入観なしで読んでほしい、ということもあるのかもしれないけれど…
個々の作品についても「描きすぎてはいけない」という意図なのかもしれないが、「あるある」という共感や「そういえばこんなことがあった」「あるかも」といったリアリティを感じさせるには肝心なところが説明不足で、申し訳ないけれども説明しなくていいことばかりが描き込まれている気がした。

(No.1406)