マンガばっかり

マンガ批評

霧尾ファンクラブ

★★★★★

地球のお魚ぽんちゃん、による押し活マンガ。
同じクラスの霧尾くんを推しまくる藍美と波のバカっぽい日々が、ほんとにバカっぽく、しかし、推しのいる人たちには、なんかちょっとわかったりするのではないかとも思える大傑作。
これ以上おおげさにしてしまっては興冷めになってしまうというギリギリくらいの距離感がいいと思う!

(No.1387)

やがて明日に至る蝉

★★★

ひの宵子による単行本。
『このマンガがすごい! 2024』 のオンナ編で21位、「性被害者の心の痛みに迫る悪漢の表題作」という紹介文から読んでみたのだが、性被害を受けたはずの女子が、あまりそのことを気にしていないというか引きずっているようにも見えず、むしろその弟である遥斗との関係を追いかけているようにも読めて、そのあたりが自分に繊細さが欠けているせいでもあるのだろうけれどピンと来なかった。
他の収録作品についても、悪くはないが、習作的な、実験的な感じであり、そういうのは新人漫画家としては仕方がないのかもしれないが、もう少しかなぁ、と。

(No.1386)

ゾワワの神様

★★★

うえはらけいた、によるコピー・ライター漫画。
ゾワワ… ということから、何か怖い話かなぁ、と思って読み始めたが、全くもって、驚くばかりに全然違うテーマのマンガであった!
作者のうえはら氏はICUから博報堂に入社し、コピーライターを勤め、その際の見聞を元にして書いたのがこのマンガだったのだという。
かつて広告業界、それもクリエイティブ系の仕事が花形だった時代があるが、それ以来、広告クリエイターについて、あまり光が当たったという話を聞かない。
そんな中で、口コミからヒットした漫画らしい。
それほどコピーなんて大したものか、と思いながら読んだが、たしかに決定打になることもあるよなぁ、と実感。

(No.1385)

 

零れるよるに


★★★★

有賀リエによる少女マンガ。
少女マンガらしい「高校生恋愛もの」… というように表紙からは思えるが、主人公のよる、そして天雀は10歳の時から児童養護施設で共に育っている。
いかにも普通の高校生が、文化祭やら修学旅行やら体育大会を経験しながらガールミーツボーイをしているだけでは少女マンガにも、なかなか先は見えない。
そんな中での変化球的なものなのかもしれないが、取材も下準備もしているようで、しっかり現実感を持って描いているように思われる(実際がどうなのかは不勉強で分からないのだが)。
これまでに『パーフェクトワールド』という12巻ものの作品を描きあげ、映画化もされて人気だったようだが、こちらは車椅子に乗った青年との恋愛を描いているようだ。
この国の政治や経済、文化などを見ていると、相変わらずの「強いものが強い」であって、げんなりさせられるが、人々の意識は多様性についても考え始めるようになっているようで、その動きの底の部分ではこうしたマンガが読者を獲得していること、またドラマ「silent」のヒットなども影響しているようで、やはり文化の力というものも侮れないような気がする。
そんな中で、近年の芸能界で話題になったジャニーズ、宝塚歌劇、吉本… これが今後どのようになっていくか、注目していきたい。

(No.1384)

平和の国の島﨑へ

★★★

濱田轟夫・瀬下猛による人気マンガ。
中東のテロ組織、ネットで呼びかけられた若者たちによる強盗事件、そんな現代的なアブナイ状況の中で、孤児として生き延びさせられた島﨑が平和の国・日本で暮らしていくという話。
おりおりに西アジアの食事などを持ってきているあたりは『ゴールデンカムイ』を狙っている気もするが、それはまぁ、いいにしても、今日、ハマスVSシオニズムの攻防を見せられている者としては、ただエンタメのために消費していいのかな、という気もする。
まぁエンタメはエンタメで、堂々とやってけばいいのだけどね、しかし、それにしても島﨑を「狙う」という国際テロ組織LELが、いったい何のために、なぜ、多くの犠牲を出しながらも日本で島﨑を殺さなくてはならないのかが全く理解できない。
そんなもんは枝葉であって、とにかくハデにドンパチしたら盛り上がるんだ、と、言えば言えるのかもしれないが、だったら死ね死ね団のような悪の秘密結社が、あまり深い理由もなく日本人抹殺のために暗躍するのと変わらない気がする。
とても最強の男なんかに見えな~い、というようなギャップ萌えだけで読者をつなごうとするのも無理だと思うし…
そもそも死ぬとか殺すとかっていうのは、ほんとにものすごく重いことなのに、そのことを意識もしないようなバトルものってどうなんだろう、と思えてならない。

(No.1383)

いつか死ぬなら絵を売ってから

★★★★★

ぱらり、による『このマンガがすごい! 2024』で18位になっていたマンガ。
なんとなくマンガの話かと思っていたが、ファインアートで「絵を売る」ことをテーマにしたマンガであった。
ファインアートといえば、近年では『ブルーピリオド』や『ハチミツとクローバー』『ギャラリーフェイク』『左ききのエレン』『かくかくしかじか』『ひらやすみ』などが浮かぶが、「売る」ということに焦点を当てたものはなかったように思う。
しかし、売るだけを前に出すのではなく、きちんと描くことにも向き合っているところがいいと思う。
この作家が、どれくらい美術業界に通じた人なのか、また、ここに書かれているような世界が、どれくらいホンモノなのか、判断することはできないのだが、素人には十分にホンモノと思えるようなマンガにはなっているように思えた。

(No.1382)

サンダー3

★★★★★

池田祐輝による人気マンガ。
4等身のマンガキャラクターが、宇宙人侵略されているリアル世界の日本で戦うという話(らしい)。
まだ3巻まで読んだのみなので、今後の展開は分からないが、ギャグでありながらリアルで、リアルながらにギャグでけっこういいかもしれない。
どうして人が生き死にしている事件が起こっているのに、渋谷の街に繰り出すことができるんだろう、というあたりは、この手のマンガにはよくある理解不能な点なのだが(パニックになると人は用意に家に引きこもるのだということはコロナで立証できたと思うけれど)、そうした点を除けば、期待できる作品であるように思う。
王道ものには、もう疲れてしまっているのだが、こういう変化球ならば十分に楽しめる。
ただ『ワンパンマン』や『怪獣8号』、『ダンダダン』など、滑り出しはおもしろいと思えたものの、連載が長くなってくると、吸引力が落ちてしまっているように感じられ、『サンダー3』は、このままの勢いで駆け抜けて欲しいと思う。

(No.1381)