マンガばっかり

マンガ批評

恋せよまやかし天使ども

★★★★

卯月ココのマンガ。
『このマンガがすごい2024』で上位にランクインしていたことから読んでみた。
美少女と美男子、実は、内面がともに漢気がありすぎる… というギャップもの。
そこまで驚くべき設定でもないし、展開もおおむね予想のできるものではあるのだが、あの手この手をやりつくした少女漫画界では、ちょっと歩を進めた感じはあるかと思う。
3巻まで読んだところだが、二神というかき混ぜ役(?)の男子キャラも登場して、いい感じに動いてきたと思う。
とはいえ「どうして狭い地域内で、お互いに外で会っているというのに、学内の誰にも会うことがないのはなぜ?」などとは思うし、「それなのに二神には決定的な場面を目撃されたりするのはなぜ?」とも思うのだけれど、そのあたりでもう少し納得できるようになれば、さらにいいと思う!

(No.1407)

四十九日のお終いに

★★★

田沼朝の短編集。
『いやはや熱海くん』がとてもよかったので短編集を買ってみたのだが、習作という感じであった。
「普通」では片づけられないマンガを描こうという意欲は感じられるが、独特の画風も災いしてか、男なのか女なのか、高齢なのか若年なのかがわかりにくい。
そういう先入観なしで読んでほしい、ということもあるのかもしれないけれど…
個々の作品についても「描きすぎてはいけない」という意図なのかもしれないが、「あるある」という共感や「そういえばこんなことがあった」「あるかも」といったリアリティを感じさせるには肝心なところが説明不足で、申し訳ないけれども説明しなくていいことばかりが描き込まれている気がした。

(No.1406)

ショーハショーテン!

★★★★★

朝倉秋成・小畑健による熱血漫才マンガ。
野球などのスポーツや王道バトルものをマンガの世界でやりとげたのが小畑健が作画した『バクマン。』。
もともと読者の認知度も高いので爆発的につながったのだと思うが、お笑いについても若い人が興味を持つジャンルでありながら、これまであまり成功したマンガはない。
いや、成功作というより、扱った作品も少ない。
なぜかといえば、ネタを考えるのが大変だからだ!
べしゃり暮らし』も成功作の一つだと思うが、ただただ熱血というだけでなく、面白いコンビのマンガは、やはり面白いと感じさせるネタをやっていたし、この『ショーハショーテン!』でも原作者がお笑いを志した人間だったということもあってか、説得職のある内容になっていた。
ネタの構成についての蘊蓄も取り込み、このあたり一般読者が付いてくるかどうか少し不安でもあるけれど、今の段階でも十二分に成功作だと思う。
ちなみに並行して読んでいる『あかね噺』は、お笑いながらも落語なので、そこまでネタの作成には困らないだろう。
ともあれ、こちらも十分に面白い作品!

(No.1405)

葬送のフリーレン


★★★★★

山田鐘人の原作に、アベツカサが絵を担当した人気マンガ。
「少年サンデー」に連載中で各種の賞を受賞し、アニメも大人気。
ただ、これまで何度か紹介記事を読み、アニメ第1回の途中まで見て「嫌いなヤツだなぁ」と思ってそのままにしていた。
しかし、まぁ、これほどの話題になっていたら、読まず嫌いというわけにもいかんなぁ、と思って単行本を読み始めたところ、おもしろい…
勇者ヒンメル、僧侶ハイター、戦士アイゼン、そして1000年は生きると言われる魔法使いの少女(おばあさんのはずだが、なぜか少女と言っていい容姿)が、魔王を討伐したという凱旋のシーンから始まる。
魔法やら勝利やらダンジョンやらという用語に忌避感を抱く者としては、最悪のオープニング!
しかし、ダメを承知で読み始めると、熱い感情というものを持ったことのないフリーレンが、少女フェルンに対して持ち始める感情、とうに老いて死んでしまった勇者ヒンメルに抱いた感情…
というものに折に触れて気づきながら、目的のあるような、ないような旅を続けるというのは悪くないぞ!
結局のところ、次から次にクエストが示され、ダンジョンに誘い込まれてバトルを繰り返すというRPGそのままなのだが、「〇〇を目指すぞ!」といった変に熱血な感じがなく、それよりも自分探しや恋愛、人が生き死にすることの意味と無意味についての随想の方がストーリーを牽引している感じが心地よいのではないかと思う。
それも、ことさらに青春青春していないし、人間っていうのはね、という説教ぶった感じもなく、すんなりと納得できるのだ。
思えば人生というのは、入学試験に入社試験、年度末の決算やら報告書やらで、さまざまにクエストを課されて、成功したり失敗したりしているわけで、それを戯画化したところにRPGがあったわけで、そのRPGがあまりにも目立ちすぎたところで、少し人生よりに修正を施したものがフリーレンだった、ということになるのかもしれないな…

(No.1404)

え、社内システムすべてワンオペでしている私を解雇ですか?

★★★★

原作・下城米雲 漫画・伊於によるお仕事マンガ。
いかにもラノベっぽいタイトルだが、ラノベをコミカライズしたもの。
ラノベというと異世界に転生したり、美少女が出てくるものばかりという気もするが、ソフトバンクの現役社員がタイトルをはじめとしてAIを活用しながら書いた小説なのだという。
今っぽいけれど、悪くない。
タイトル通りの事実から、幼馴染の立ち上げたプログラミングスクールで働く佐藤愛(コスプレで勤務)が、訪ねてくるさまざまな人に時に心、時に技術のアドバイスをしていくという物語(途中なのでどうなっていくのかはわからない)。
こんなことあるわけないというマンガ的、というかラノベ的な展開もあるが、それは狂言回しともいうべきもので、現代の日本社会をうまく批評し、少しだけ夢を与えてくれるものになっているように感じた。

(No.1403)

新・信長公記 ノブナガくんと私

★★★★★

甲斐谷忍による戦国武将の末裔たちが現代の高校でバトルを繰り広げるというとんでもマンガ。
東京リベンジャーズ的な学園ヤンキーものでありながら、戦国武将の末裔ということで、それぞれの戦闘能力や性格なども一挙手一投足に表れており、しかし、それが実際はどちらに転ぶかはわからないというストーリー。
バカっぽいと言えばそれまでなのだが、十二分に知的好奇心も刺激されるいいマンガだったと思う。
しかし、まさかの7巻にして終了!
信長と家康がどんな感じでどう戦うのか!
と思ったところでアッサリと終わってしまっていた!!!
読売テレビでドラマ化されるくらいには人気であったはずなのだが、打ち切りなのだと思う。
ドラマの方も、申し訳ないけれど、存在を知らなかった。
大衆的な人気を得るためには、知恵と知恵を戦わせるのではなく、体と体で戦わせて、時に友情やハートでほろっとさせてくれるのでないといけない、ということなのかもしれない。
うーーん。

(No.1402)

気になってる人が男じゃなかった!

★★★

新井すみこ、のマンガ。
音楽の趣味が似ていることからクラスのギャルとCDショップの陰キャ少女がついに友人になるという話。
「vol1」というので、まだ続くらしい。
Twitterのフォロワーが85万人ということからネットから登場したマンガ家らしい。
こういうガールミーツガールもあっていいかもしれないが、まぁ、もうこれでいいだろう、という気もする。
陽キャ陰キャという人が、どうしたって存在するものだとは思うが、そこまでアパルトヘイトみたいに口を利くのも禁止ということはないはずなので、まして同性でもあるのだし、ここから話を続けるのはしんどいのではないかという気がする。
まぁ、この先で陽キャの人々もいつしかロックに親しんでバンドでも結成する、ということなのだろうか?
そういうえばボッチがバンドを組むというようなバンドもあった気がするけれど…

(No.1401)