マンガばっかり

マンガ批評

シジュウカラ

★★★★★

酒井恵理によるオトナ漫画。
シジュウカラはもちろん四十雀から来ているのだろうが、主人公である女性漫画家の年齢でもあるのだろう。
漫画家を志しながら、アシスタントに甘んじ、主婦の座で満足していた忍は、ネットで自分の書いた漫画が売れ始めているのを機に漫画家活動を再開する。
アシスタントになったのは、近所に住む美青年。
実はダンナのかつての浮気相手の子であり、青年はひそかに忍の家の崩壊を狙っていた。
しかし、青年は、実は忍の大ファンでもあり、恨みよりも忍への共感と愛が強くなり、忍の方もだんだんと気持ちが傾いていく…
あり得ない設定ではないなと思う。
オバサンと美青年の愛なんてないから、という風には単純に言いきれない!
こういうオトナな漫画。
美青年との不倫、すれちがい、偶然…
そういういかにも大衆的だと言われそうなものをまといながらも、しっかりとこの時代に生きる人について描こうとしていて、頑張ってほしいなと思う。

(No.1207)

あちらこちらぼくら

★★★

たなと、による学園マンガ。
派手めな元・ハンドボール部員・真嶋とサブカル地味坊主頭・園木を中心にした学園スケッチ。
青年コミック誌ヒバナ」に連載しているということもあって、中身をまるで知らずに買ったのだが、BLだな。
しかし、男子高生の日常生活を、誇張気味に仲良しに描いたりするようなものとは違って、わりにリアルで共感できるところはあった。
しかし、わりと共感できるところはあるにしても、それがマンガとして面白いのかというと、そういうわけでもない。
ジャニーズタレントや韓流タレントがわちゃわちゃと出て来る番組を見るようなもので、それ自体について、いやらしいともおぞましいとも思わないながら、積極的に見続けたり、ましてや応援するかというと全くそういう気にもならないといった体のもので、一般男子にはあまりウケないかもしれないなと思う。

(No.1206)

君は放課後インソムニア

★★★★★

オジロマコトによる不眠症の高校男女が不眠をきっかけにして接近するが、くつろげる場所として校内の天文部部室に入り浸るうちに、いつしか天文部部員となる、という話。
インソムニア? と思ったが不眠症のことらしい。
まぁ、よくある、というか、ありそうな話ではあるが、中見がどこにでもいる感じの男子高校生であり、曲もどこにでもいる感じの女子高校生であること。
二人とも見た目がいいとは言えないが、かといってどうしようもないというほどではない。
水泳部員の曲は、明るく元気で、友人も多く、中見は中見で友達が少ないにしても、いないわけではないし、勉強はかなりできる…
そういう最高過ぎず、クズ過ぎない二人だから、微妙に接近できるのだし、共感を得られているのだと思う。
石川県七尾市というビミョウな設定もいいと思う。
作者は埼玉出身の女性漫画家らしいが、旅行の途中で七尾高校天体望遠鏡を見て、そこから捜索が始まったとのこと。

(No.1205)

戦争は女の顔をしていない

★★★★★

小梅けいと、が、ノーベル賞受賞のスヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチのインタビュー作品をマンガ化したもの。
第二次大戦でドイツは不可侵条約を破ってソ連侵略を開始したが、ソ連では戦線に女性たちも参加し、トータルで2700万人の死者を出しながら、なんとかドイツを破った。
当時のソ連の人口は1億9千万だという(日本は人口7200万人で死者は300万人)。
巻末で監修者の速水螺旋人が書いているように、ロシア人たちはドイツに侵攻してレイプをしたことも報告されているので、本書にあるように凄惨だったのはソ連であってドイツ人が悪なのだ、などということでは全くない。
そもそも戦争というのは、国の人口の6分の1をも絶やしてしまうような人災であり、現在のコロナ禍やスペイン風邪、また震災や津波と比べて、どちらがひどいかどうかはともかく、まことにもってバカバカしいものだということは、本当に本当に肝に銘じておかねばなるまい。
さらにいえば、現在のコロナ禍のような天災に立ち向かう時でさえ、日本政府のようにまったく科学的知見やデータを見ることもせず、自らの過信やら政治信条やら賄賂やらが絡まってなのか、あるいは単なる知識不足なのか、まともな対策さえ取ろうとしないというのは愚の骨頂の中の骨頂の中の骨頂の中の骨頂だということも、肝に銘じておかなければならない!
戦場に飛び出した仔馬を撃ち殺し、その晩に出てきた馬肉のスープを嬉々として食べることができなかったというようなエピソードは、何も女性兵士だからの甘っちょろさだ、などと言ってはいられない。
男だって女だって、老いも若きもそれぞれの場で立ち向かわされ、関わらされるのが戦争なのだ…
これまでは男性中心の視点で戦史が書き綴られていたが、それだけでは誠に大失敗であり、だから本書のようなインタビューがノーベル文学賞を取ったのだろうと思う。
いくつかのエピソードの中で、もっとも印象に残ったのは、ある女性が語った言葉「戦争で一番恐ろしいのは死じゃない。男物のパンツをはいていることだ」というもの。
「何を女々しい!」と、男性読者たちは言うのかもしれないが、雄々しい男性たちが本当に雄々しく振る舞って生きてきたと言えるのだろうか?
例えば男の中の男である作家・石原慎太郎がサムライの気概を持って臨んだという法廷で「脳梗塞の後遺症があって全ての文字を忘れて平仮名さえ忘れました」と言って責任逃れしようとしていたが、今、その立派なおさむらいさんが、『男の業の物語』などという本で男性の素晴らしさを語って(ゴーストなのかもしれないが)、そんな本がそこそこに売れてしまっていることを思えば、女を笑うのもいいだろうけれど、その前にこういうおさむらいさんを笑うのが先なんじゃないかと思う。

マンガ化したのは小梅けいとなる人で、どこぞの女性かと思って調べてみたら男性であり、京都大学の漫画研究部出身で大学院を中退してラノベの表紙絵や成人向けマンガを描いている人なのだという。
京大だからエライわけじゃないし、エロ漫画を書いたらダメだというわけでもなく、また男だからいいわけでもなく、かといってわるいわけでもなく、いい漫画だと思ったから「いい」というのみ!

(No.1204)

あーとかうーしか言えない

★★★★

近藤笑真によるエロ漫画編集者の女性と、そこに持込をした女性漫画家の物語。
3巻になると、その漫画家が17歳であったことも発覚!
エロ漫画は、コミケへの出品作品を見ても触れずにはいられない漫画世界の重要な部分。
その謎を上手く描いている、などとは、その業界に通暁していないのでわからないのだが、あぁ、きっとこんな感じなのかなぁ、とは思える。
こんなにマンガっぽいキャラクターだらけなわけはないだろうが、そのあたりはマンガという大衆娯楽である限りはしょうがない!
あまりにもアンリアルすぎて読めないならまだしも、そうでなければ、おもしろかったらそれでいいと思う!

(No.1203)