マンガばっかり

マンガ批評

クジャクのダンス、誰が見た?

★★★★★

浅見理都のミステリー漫画。
このマンガがすごい! 2024』のオンナ編で4位ということで読んでみた。
「Kiss」に連載中とのことだが、もう男向けとか女向けとか、そういうことは全く関係なく、引き込まれるマンガだった。
まだ4巻までしかよんでいないが、人情もの的なものはありながらも、それだけには引きずられない論理性もしっかりあって、まぁ、だからこそ話はどんどん複雑化して、誰がどういう秘密を持ちながら生きているのかわからず、もやもやも募って来るのだが、そういうことをつまりは「おもしろさ」というのかと思う。
クジャクのダンス、誰が見た?」というネーミングも、そのおさまりの悪さについては「逃げるは恥だが役に立つ」にも匹敵すると思うのだが、これはジャングルの中でクジャクがダンスをしていたにしても、それを見たという証人がいなければ、ないことになってしまうのか、ということのようだ。
前作『イチケイのカラス』はドラマ化もされた人気作らしいが、なかなかスゴイ漫画家であるように思う。
女性漫画家のミステリーで最近高評価の者が多くなっている気がするが、こういう女性が担う部分が多かった部分についてのリアリティがあるから、ということもあるんじゃないだろうか。
例えば主人公の心麦は父の同僚警察官・赤沢とは家族ぐるみの付き合いなのだが、その赤沢の妻といっしょに鶏のから揚げを食べたりする。
落としてしまった鶏のから揚げを、「3秒ルール」と言って口に放り込むリアリティ、また、心麦の友人である法学部生が熱心に裁判に通っているが、実は裁判官が推しなので見に行っていた! とか…
もちろん、こうしたものはを多少無理矢理にストーリーを展開させるためのアリバイ作りのようなものではあるのだが、そこが自然で、「力業」で読者に叩き込むのではなく、「気持ち技」で引き込むような周到なズルさであって、そのズルさが、とてもズル・うまいと思うのである!
ついでにもう一つ書いておけば、巻末にある番外編マンガがおもしろい!
アニメ化されると「ほんとに声優さんてすごい」みたいな話ばかりで、おもしろくないのだが、まぁ、事実としてそう思ったなら、それはそれでイケナイということでもないのだが、この巻末マンガは、ちゃんと面白い。
作中では、語る必要もないし、語る場もないので挿入されないわけだが、「あぁ、この人ってきっとそうだろうなぁ」という、同人誌などでいうサブストーリー的なものとして、しっかりリアリティを持ち、作品を補完できるくらいの内容であるからだ。
うん、まぁ、自分の一次創作に対して二次創作する感じ、とも言うべきだろうか…

(No.1390)