マンガばっかり

マンガ批評

絶園のテンペスト


★★★★
城平京・彩崎廉による近未来SF、ミステリー、ファンタジー作品。
シェークスピアハムレットなどを下敷きに使いながら展開し、アニメ化されるなど、人気の出たようだ。
この手の作品は人気が出ると、どうしても連載を長引かせてしまいがちなのだが、おそらくは当初の予定通りの設定で9巻で完結させた潔さは称賛に値すると思う。
若い男女のラブコメ風な部分と、世界を守るかどうかというヴィジョンが密接になっている点など、いわゆるセカイ系の作品に分類されそうだが、完全に男女の関係だけに収めていない所に新しさを感じた。
しかし、両親を殺されている真広はともかく、それ以外の登場人物の親や親戚たち、つまりは、いわゆる大人たちがほとんど全く出てこないというのは瑕疵であったと思う。
ことに古式ゆかしい魔法使いの系統をうけついでいる鎖部家なのに、登場するのは若造ばかり!
もちろん世代間のギャップなどまで描いていたら、このサイズにまとまらなかったのかもしれないし、若い世代の人気を得ることもできなかったかもしれないが、そんな意味で、やはり良くも悪くも若者向けのエンターテイメント漫画で、広い範囲で長い時間をかけてよまれるような「古典」の領域には入ることができそうになく、そのあたりが残念に思えた。
(No.776)