マンガばっかり

マンガ批評

クジラの子らは砂上に歌う


★★★
梅田阿比のマンガ。
砂の海に浮かぶ島は、実は流刑者たちの残された島であった… といったファンタジーロマン(とでもいうのか)。
帯には読売新聞、朝日新聞ダヴィンチでも話題になって、「このマンガがすごい」でも10位だったと言ったことが書かれている…
コアなマンガ読みには、こうしたキレイな絵柄で、シビアな世界を描くファンタジーが好きなのだろうなと思う。
が、私としては、きちんと作りこまれた世界観だとは思うが、なぜこうした世界を作る必要があったのかというところが伝わってこない気がした。
もちろん「商売だから」と言われればそれまでだが、たとえば「ナウシカ」や「トトロ」などのファンタジーには、環境破壊やら高度経済成長前を描くことによる現代に対する批評意識や提案があった。
それがあたっているにしろいないにしろ、何事かを考えさせたり、感じさせたりするものがあったように思うが、ここには「上質のファンタジー」というただそれだけしかない気がする。
最近はフェスに政治を持ち込むなとかいうことが共感を生んでしまうような状況だが、そんな時代の作品なのかなぁという気がした。
(No.981)