マンガばっかり

マンガ批評

HUNTER×HUNTER


★★★★★
冨樫義博の長編バトル漫画。
定番バトル漫画を最新刊まで再読/通読してみた。
なにが冨樫をかくまで有名人にしているのかと考えながら読んだが、まず、作品世界のインチキ世界観を、いかにももっともらしく、徹底的に科学的(っぽく)描いているところだと思う。
何種類のカードがあって、どれとどれを使うとどう勝つのか… なんてことは、見ている側はあまり真剣に読まないものだと思うが、そういうところを徹底的にしないと気が済まない人なのだろう。
絵がいい加減、休載が多い、あそこまでやらせていいのか、というような言葉をよく聞くが、「いいんです!」と言いたくなる。
コミックスの自己紹介には「たいへんです」「苦しんでます」というコメントが載っていたが、読者が想像する以上に(無駄に)大変だったのだと思う。
梶原一騎も、インチキなスポーツ力学をいかにももっともらしく説明し、納得させていたが(例えば大リーグボール3号の理論)、それに通じるものを感じた。
そして魅力の第二は人間描写とそれをドラマ化する際のリアリティだ。
どこがリアルなのか、と思われるかもしれないが、「ONE PIECE」に比べると特にそれが感じられる。
例えばキメラ・アントの王の存在だ。
生れた時からなんでもできてしまうようなコイツの存在のどこがリアルなんだ、と思われそうだけれど、自分に名前がないことにふと気づき、血も涙もないはずの自分が何か大切にしなければいけないものとしてコムギを意識し始めるところなど、恐いくらいだ。
敢えて言おう! これは至高のリアリズム漫画なのである、と。
あ、いいすぎか…