マンガばっかり

マンガ批評

ドカベン

★★★★

水島新司の名作、今さらながら…
オンタイムで読んでいたドカベン・ファーストとも呼ぶべき明訓高校編。
オンタイムなので、読みこぼしもあったように思うし、おそらく完結まで読んでいなかったと思う。
明訓のような選手の数も少ない学校が無敗記録を伸ばせるはずがなく、あそこまでボロボロな里中や山田を出し続ける(しかも勝つ)などというのはほとんど高校野球への冒涜とも言うべきことかとは思う。
しかし、打率七割とかいう山田も、足が記録的に遅い弱点があること、お世辞にもカッコいいとは言いにくいルックスであること、このあたりがとてもいいと思う。
夜になると突然強くなるBT学園(忘れていた)などというのも、そんな学校あるわけがないし、富士だの朝風だのいうブルートレインと同じ名前の選手が9人揃うはずなどない。
そういうあたりはいかにもお子様向けマンガではあるのだが、暗い中でも妙に視力の衰えない選手がいたら、おそらく力を発揮できるだろうなと思うし、スタンドの照明をうまく使って攻撃や守備に生かすことというのも、絶対にできないわけでもない。
普通に考えて、ありえないのだけれど、でも全く科学的にないのかというとそういうこともなく、ちゃんと野球のルールは守っているというあたり、その合理性とエンターテイメント性をギリギリで保ち続けているというところがこのマンガのよさで、もっと大きく言えば水島の野球マンガ全般に、これは漲っていたように思う。
文庫版の解説は、80年代や90年代を代表する選手たちのものであったが、彼らを野球好きにしたのの何十パーセントかは水島の力だろうし、今日に至るまで野球の人気がキープされているのも水島によるところもあると思う。
水島は2022年1月10日に没したが、本当に日本の野球にとってマンガにとって貢献してくれた人だと思う。
ありがとうございました。

(No.1316)