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マンガ批評

失踪日記

失踪日記
★★★★
手塚治虫文化賞の大賞を受賞した吾妻ひでおの作品。
ギャグマンガ家としての吾妻が行き詰まって連載を投げ出して、自殺未遂したり、山にこもったり、配管工になったり、アル中になったり… という日々をおもしろおかしく描いたマンガ。
「ふーん」と思うのだけれど、それは「ふたりと5人」あたりから読んでいた人間だから「あの吾妻ひでお先生がこんな生活をしていたのか」という意味の「ふーん」であって、「現代における失踪者の日常をおもしろかなしく描いたから」の「ふーん」ではない。
自殺や失踪がおもしろいわけがないからだ。
朝日新聞の「ひと」欄に、「妻に向けた謝罪や弁解の意味で、こんなおもしろいこともあったんだよ、ということをマンガにした」というようなことを語っていたが、それならわかる。
家族を放り出して、自殺だの失踪だのをすることが、どれほど大変で、悲惨で、滅茶苦茶なことなのか、今更、語るのもおそれおおいというか、申し訳ないような妻に対してだから、最も根幹の部分について何も語らないのは許される。
しかし、この本が「何物にもとらわれない破天荒な人間によるスローライフの実践!」という風に解されそうなのがコワイのだ。
そんなわけで、今年の大賞は「のだめ」に与えるべきだったと思う。