マンガばっかり

マンガ批評

アラバスター

アラバスター 全3巻★初版★ 手塚治虫/作
★★★★★
手塚治虫がその存在を否定したくなるほどの失敗作として名をあげているマンガ。
劇画ブームで後輩達から追われている最中、暗くて救いのない物語を描いてしまったのだ、と言う。
だが、それほど悪いものには思えない。
人間を透明にしてしまう光線をめぐる物語。
肝腎の悪の権化であるアラバスターのキャラクターが見えにくかったが、文庫版の解説で市川森一も書いているように主人公の亜美は、魅力的な、かわいい、かわいそうな子であった。
彼女が悪に染まりかけては、また揺り戻され、また悪に染まっては揺り戻されるところが正義をア・プリオリに正統化しておらず成功していると思う。
この後、手塚は「正義の未決定性」というあたりに磨きをかけ、同じ雑誌である『少年チャンピオン』に「ブラックジャック」の連載を始めるわけです…