マンガばっかり

マンガ批評

地球を呑む


★★
手塚治虫の中編サスペンス。
おもしろくないことはないのだけれど凡作だと思う。
絶世の美女ゼフィルスが男たちを破滅に追い込むというストーリー。
ゼフィルスというのは蝶の名前、その造型は「人間昆虫記」に近い。
これが手塚の昆虫観なのだろう…
しかし、人工皮膚の開発もいいのだけれど、歯並びや髪の毛はどうなのだろう? 眼鏡は?
どんなに完璧な人工皮膚に身を包んだからといって声が変わるとは思えないし、世界中の言語が話せるようになるとも思えない。
千歩譲って、人工皮膚が完璧であったにしても、ゼフィルスなる「世界中のどんな男も好きにならずにはいられない」などという姿形の女性はありうるだろうか?
すばらしい容姿の持ち主はいるにしても、それが全てを投げ出してでも性行為におよばなくては居ても立ってもいられない… などということはあり得るだろうか?
こういう詮索を無粋だと言ってしまえばそれまでだが、テクノロジーとしても、人間心理としてもリアリティをあまりにも逸脱してしまったら、それはドラマではない。
連続する刺激でしかない。
マンガではあっても、ちょっと限度を越えた放縦さであったように思う。