マンガばっかり

マンガ批評

惑星のさみだれ


★★★★
水上悟史による変則バトル漫画。
サイキックの兄(アニムス)と妹(アニマ)が地球を破壊するかどうかの戦いを始め、妹は地球の12人の戦士たちで防衛戦に勝利するというストーリー。
主人公は戦士の中心的存在ともいうべきさみだれと、彼女に絶対服従を誓う夕日である。
死闘の末、アニムスに勝つのだが、その後で、さみだれは、わが手で地球を破壊するのだと言って鉄槌を下そうとし、夕日もそれに従う…
地球を守り抜いた者が、その先で、我が手で滅ぼそうとするのが、このマンガの新しいところかと思う。
通読して、悪くはないけれど、不条理な戦いを強いられ、キミとボクの愛と世界平和が短絡的に繋がり、リアルに考えればおそろしすぎる戦いが妙にコミカルに描かれるといった側面は、それぞれ「エヴァ」、世界系の諸作品、「ぼくらの」などを思い出させた。
しかし、それらはもう同時代性といってもよいような、デフォルトのようなものだと思うので、別にとがめだてする気はない。
むしろ最後まで理解に苦しんだのは、さみだれの「地球をわが手で砕きたい」という野望(若くして死を宣告された病人なら抱いても仕方のないものかも知れないとは思うものの)を、夕日が二つ返事で引き受けたことだ。
いかに彼がゆがんだ少年時代を過ごしたとはいえ、そのことと姫の野望に同調すること、そして、姫に絶対服従を誓うことはストレートに接続しないのではないだろうか?
太陽(裏切り者?)とも、もう少しいろいろあってもよかったのかなぁ、という気がした。