マンガばっかり

マンガ批評

アルカサル王城


★★★★
青池保子がスペイン中世を描いた大作。
文庫本にして全7冊の本だったが、たくさんの登場人物の名前や関係を確認しながら読んだので、なかなかしんどかった!
が、もしかしたら世界史のどこかで習ったかもしれないというくらいにしかしらないスペイン中世の戦乱時代を、丁寧に描いた傑作であったと思う。
カスティリア王、ドン・ペドロのすごさとひどさ、人間関係などがうまく描かれていたように思う。
めんどくさいなぁと思いながらも子どもの相手をするドン・ペドロを描くあたりは少女漫画家の面目躍如であったと思うが、ただ、そういう細かい心理やらかけひきやらの人間ドラマに引きずられすぎで、その時代なりの正義やら、王国民の幸福だのということへの配慮が足りないのではないかとも思った。
自分の名誉欲やら恨み辛みだけで戦争を起こしているように読めてしまうが、おそらく、その時代なりの倫理観なり宗教観なりからやむなく戦争をしたという部分はあると思う。
そのあたりが少女漫画家の諸刃の剣だったかもしれない…
そして、連載誌が休刊となったことによって、結末があわただしく描かれているということも、作者の罪ではないだろうけれども、作品としては★を1つ分減らすだけのマイナス要素であったと思う。
もちろん、これらのマイナス要因があったからといって、本作が大作であるだけでなく、名作であることについては全く疑いがない!
(No.723)