マンガばっかり

マンガ批評

朱に赤


★★★★★
柳沢きみおが「翔んだカップル」連載の後に少年マガジンに連載した漫画。
ブコメの大ヒット、しかし、後半の人気凋落、亜流作品の多出などからヤケになって描いたという作品。
もうラブコメはうんざり、そして、人気が出ないだろうなぁと思って描いたというのだが、人気も最低だったらしい。
エッセイでは、思い出せないし、思い出したくもない… というように書いていたが、まさかの名作!
もちろんこういうものを少年誌に描いて、人気を取ろうなどというのはおこがましいのだが(ジャンプを去ってから、編集者から作品の内容について、何かを言われることもなかったのだという)、両親の浮気、近親相姦、殺人未遂、風俗店での仕事、同僚の死…
よくもよくも並んだものだが、その並び方に不自然さはないし、人気取りのために突拍子もない設定をしているわけでもない。
やけになって、作品をおかしな形で終わらせてしまうこともよくある柳沢だが、最後まできちっとして、暗いながらも未来への展望がうっすら見えるという佳作となっている。
ここから少年誌作家から青年誌作家になったのだとも言われるが、その違いを超えて、最もまとまりがあって、深みのあるリアリズム漫画になっていると思う。
(No.734)