マンガばっかり

マンガ批評

夕暮れへ

 

★★★

斎藤なずなによる、ガロ系マンガ。
ガロ系、というよりも「ガロ」だな。
版元は青林工藝舎(右翼じゃない方)。
90年代の「話の特集」に載った短編と2010年代になって描かれた中編2篇である。
帯には近藤ようこが「こんな大人の漫画読んだことない」という評を書いているが、たしかにそういうことになるのかと思う。
2010年代になって団塊の世代と思われる作者が、身内や近辺の人の死や介護をみて、自分自身でもいろいろ考えていることがわかる… といったマンガだが、しかし、自分には市井の妖しくも愛すべき人々を描いた90年代のものの方がおもしろく読めた。
おそらくは自分が、まだ介護や老いに対する認識が甘く、そこはまだ考えなくてもいい、考えたくない、ということからきているのかと思う。
そもそも幼稚園の頃は小学生を、そして中学生、高校生、大学生… 働くようになってからは5年上の人、10年上の人を、なんやかんやで反発もしながら尊敬し、憧れながら生きてきた。
いつかこういう振る舞いがでいるように、また、こういうのだけはやめようというように。
しかし、残念ながら老について、ことに介護や死を迎えるしかなくなる立場の人たちに向かっての「憧れ」はない。
見ないことにする、という態度しかとれていない。
今も読んでいるマンガは、高校生のスポーツやら恋愛やら、あるいは異世界に紛れ込んでの冒険スペクタクル… のようなものが多い。
老人が出て来るものもあるけれど、それは静かでいて、カッコイイ。
現実の老人で、かくもカッコイイだけの存在は、残念ながら想像しにくい。
さまざまなマンガについてリアルさがない、生きていく上での喜びとともに哀しみが出ていない、などと批判しているが、実は「老」については、リアルさなんか感じてないし、感じたくもない、というのがおそらく正直な所なのだろう。
これは自分の限界であろうし、差別なのであろうが、老人マンガというもの、老人表現についての限界なのかもしれない。
『傘寿まり子』なら、楽しく読んでいるのだが、あれは明るい側面、スゴイ側面ばかりだからな…

(No.1105)