マンガばっかり

マンガ批評

アイ・ドント・クライ


★★
イシノアヤのBL作品。
あまり売れないボーイズグループが解散、そして、下積み生活をするうちに俳優として注目を集めるようになり、かつてのマネージャーと再会、そして男と男の関係が始まる… というもの。
上下2分冊のうち、ボーイズグループがどういう感じで、どうやって解散することになったのか、どういう下積み生活をしているのか、といったあたりが丁寧に描かれていて、そのあたりは好感が持てた。
しかし、マネージャーと再開し、お互いに気持ちを確かめ合うと、すぐに肉体関係って、いったいどういうことだよ、と、ノンケの自分としては引っかかる。
それまで丹念にビジネスとしての関係をしていたのに、お互いにいいビジネスをしあおうと誓ったら、それは愛の告白になるのだろうか?
BL文化ではそうかもしれない。
しかし、男女間であっても、ビジネスパートナーとして再開し、一緒にやっていこう、ということは愛の告白ではないし、良くも悪くもセクシャルマイノリティとされる男同士の恋愛なのに、お互いがそうした性的指向を確認し合うことすらなく、自然に受け入れ、愛し合ってしまえるというのは飛躍しすぎだし、これではポルノグラフィとしてのBLは成立するだろうが、一般読者はおいてきぼりになってしまう。
上巻で、そういう「お約束」に頼らず、丹念に二人の接近を描いていたのに、この突然な感じは、やはり違和感を抱かざるを得ない。
まぁ、そんなやつのために描いたんじゃないから、と言われればそれまでで、そこはポルノやAVに芸術性を求めるようなもの、なのか…?

(No.1128)