マンガばっかり

マンガ批評

定額制夫のこづかい万歳

 

★★★★

吉本浩二による私小説的マンガ。
ブラックジャック制作秘話』や『ルーザーズ』などで知られる漫画家が、月々の小遣い2万1千円という中で、どうやって日々を生きているのかを切々と描く。
さまざまな場所で知り合ったお小遣い夫たちと意見交換しながら、なんとか日々切実に、しかし楽しく生きていくかということを描いている。
苦笑しながら読めばいいのだろうけれど、暗澹たる気分になった。
貧しすぎる、と…
自分だって億万長者ではないので節約しながら生きてはいるのだが、ほぼ趣味でケチをしているようなもので、ローソンのポイントを貯めては数ヶ月に一度、好きなことに使うのが楽しみだ、というところまでは追いつめられていない。
ここに登場する人たちは、作者の吉本をはじめ、きちんと仕事をして、きちんと結婚し、子どもたちを育てながら(子どものいない夫婦もいるが)生きている。
年収がどんどん減る中、ここまでやりくりに苦労しなくてはいけない状況になっているのだろう。
もちろんお小遣いが少ないと言う割にはお菓子を買うだの、バイクの部品を買うだの、月1回・温泉に日帰りで行くだの、貧しいながらも娯楽やリフレッシュに金と時間を使っていることから、きちんとメンタル面は確保されていると言うべきだろう。
しかし、毎日、コンビニで買ったパンを食べる30代が、この後も元気に社会人を続けられるとは限らない。
また、ここに登場する人たちは「勝ち組」であって、雇用が不安定な職場にいる男性・女性は子どもを持つどころか、結婚をすることさえもできないのだ!

(No.1241)