マンガばっかり

マンガ批評

望郷太郎


★★★★★

山田芳裕のマンガ。
へうげもの』で有名な漫画家だが、見るからにパッとしないネーミング、イケメンも出てこないし美女も出てこない。
氷河期が訪れ、人工睡眠で500年の眠りから覚めた太郎が、なんとか生き残りながら人々の力と知恵と欲望についてまとめ上げていく物語。
所詮はマンガ的想像力による荒唐無稽なマンガなのだが、大会社の御曹司として金を回してきた太郎が、原始社会(しかし未来社会)の人間には、やはり同じようなよさとわるさがあったことを身をもって学びながら生きていたことに気づくというのが読みどころだと思う。
太郎には文明人としての知恵があるのだが、たいていは文明社会の中で生きていたからこそ価値があったというだけのものでしかない。
が、それでも時に頭を使い、体を使いながら道を開いていくのはリアルだし、今の日本人たちは、「これ、他人事じゃないから!」と言いたい。

(No.1287)