マンガばっかり

マンガ批評

「神様」のいる家で育ちました 宗教2世な私たち

★★★★

高橋真理子による「宗教2世」のエッセイ漫画。
安倍暗殺事件から宗教2世が注目されるようになったが、自身が創価学会の家に育ち、熱心な信仰を捧げていた母の自殺をも経験した作者がエホバの証人崇教真光統一教会、バプテスト派、幸福の科学真如苑創価学会の信者たちの2世に取材しながら綴っっている。
集英社のWEB雑誌で連載中に宗教団体からのクレームで連載が中断され、その後、文芸春秋が単行本化したというもの。
アマゾンの書評は4・7と好評価であり、宗教団体やその信者からのクレームがあるかと思いきや(既に禁書扱いになっているのかもしれないが)、低評価にしている人のコメントを見ても、既に知っていた内容、具体策がない、サッと読めてしまう… といったもので、本質的な批判にあたるものはないようであった。
この本の良いところは「反宗教」ということではなく、宗教によって安定した生活を送っている人の価値観や人生観を十分に考慮に入れているというところだと思う。
親が宗教の信者だったら、そんな親を見捨てて生きればいいじゃないか、と、第三者は乱暴に考えるかもしれないが、経済的な意味でも、また自分自身を自分たらしめている基盤が親であることからも宗教や親を全否定できないのであり、そこを自分の人生をかけて十二分に理解できているからこそのマンガであることを思えば、納得できることなのかと思う。
どうすればよいのか… わからない。
しかし、ヨソのうちのことであっても、その子が精神的・肉体的な被害を蒙っていることを知り、助けを求めているのであれば、そこは社会正義として救いの手を差し伸べる必要が、隣人としてもあるのではないか、とは思う。
山上徹也の犯行を正当化することはできない。
しかし、山上のように怨恨が溜まっていくのは当然だと思うし、それをわかっていながら布教・集金をし続ける宗教団体、それを選挙に利用するような政党というのは断罪されてしかるべきかと思う。

(No.1358)