マンガばっかり

マンガ批評

バーナード嬢曰く。

★★★★★

施川ユウキによる図書館マンガ。
本を読むのは面倒だし、すぐ飽きてしまうのだが読書通ぶりたいバーナード嬢こと町田さわ子。
毎日のごとく図書館を訪れる遠藤君。
そして遠藤君にひそかに恋心を抱く神林。
なかなかクレバーにして毒のある快作(怪作)!
登場する本、ほとんど読めていないけれど、それでも十分に楽しめる。
或る意味、ブックガイドなのかもしれない…
影響されて、この夏は、海外の古典的SFを数冊読みました!

(No.1189)

大家さんと僕 これから

★★★★

矢部太郎による『大家さんと僕』の続編。
手塚治虫文化賞短編賞を受賞した作品の続編であり、ノンフィクションなので、当然のことながら正編ほどのインパクトはないのだが、そのあたりについても、きちんと「その後」が描かれており、好感が持てた。
芸人としては、それほど成功したという感じのない人ではあるが、それはよくもわるくも、この誠実さなんだろうと思う(××あたりとは違って!)。
本作の途中で大家さんはなくなり、矢部も下宿を後にする。
このあたりで変に美談やらウケ狙いをしなかったところがよいと思う。

あ、今日は敬老の日だった!

(No.1188)

少女のスカートはよくゆれる


★★★★

岡藤真衣のマンガ。
女子高校生の性を女性漫画家から描いたもの。
性といっても、いわゆる男女の性だけでなく、痴漢、性教育、変質者、そしてトラウマ…
と、エロ男子が覗き見てへらへらと笑って読めるようなマンガではない。
女性にしても、わかる、かもしれないが、生々しすぎて、正視したくないというものかもしれない。
密かに読み継がれ、囁かれ続ければいいのかな、思う。

(No.1187)

可愛そうにね、元気くん

古宮海のマンガ。
若い人は、こういうのは好きだろうな、と思う。
マンガ少年の廣田はクラスメイトの八千緑さんがボロボロにされる姿を想像してはマンガを描き、エクスタシーに浸っているというヤバイ男。
しかし、そういう絵を好む人の界隈では密やかに人気者であったりもするらしい。
そんな廣田の秘密を知ったクラスナンバーワンの美少女にして、成績優秀スポーツ万能の鷺沢は、廣田をいたぶり、精神的に追い詰めて喜ぶ。
八千緑の弟も廣田の所業を知って、いたぶろうとするのだが… という話。
うん、確かにそういうマンガを描く人、そういう秘密を知って弄ぼうとするヤツもいるだろう…
ただ、剣道部員だと思われる鷺沢が、イジメのためにここまで注ぎ込むのはなぜなのだろう?
廣田が好きなの?
過去にフラれたことがあるとか??
まぁ、こういうことを書くと、のび太も、そろそろドラえもんから借りたグッズが役に立たないことを学習しろよ、とか、コナンの周りで殺人事件が多すぎるだろ、というのと同列に扱われるかもしれない。
が、ちょっと違うと思う。
廣田が嗜虐的なマンガを描くこと、加えて、八千緑がおとなしく、そして鷺沢が攻撃的で、二重人格者であることは、彼等の心理的な特性であって、それが本作のテーマになっているはずだ。
しかしテーマになってもいるというのに、鷺沢がそこまで廣田に、あるいは廣田イジメに執着しなければならない心理的必然について、全く説明がなされていないというのは欠陥ではないだろうか。
クラスナンバーワンの人気者でいたい気持ちは分かる。
その裏にどす黒さがあるということも、あるかとは思う。
しかし、そこまで執着させるのは何故?
同じような毒女もの『惡の華』で、仲村佐和は「クソ虫が!」と言いながら春日を追い詰めていったが、その気持ちは完全に、とは言わないにしても、まぁ、あるかもな、というくらいには理解できた。
しかし本作は、二重人格性というギャップを目立たせるだけのギャップポルノともいうべきもので、アートとは言い得ないと思う。

(No.1186)

花野井くんと恋の病

★★★★

森野萌による少女マンガ。
ドジっ子のほたると、超イケメンだけれども、愛が重すぎて、女性と長く付き合うことができない花野井君とのラブストーリー。
ドジっ子とイケメンのカップリングは、1970年代からの定番だが、ほたるのまじめさだけでなく、花野井君がまじめすぎるがゆえに人間関係がうまくいかないというあたりを持ってきたのがうまいと思う。
既視感がありながらも、無理矢理な感じがなく、気持ちよく読めた。
おためし恋愛期間を脱して3巻からは真剣に付き合うことになるのだが、これからどう話を展開させるのだろうか…

(No.1185)

異世界おじさん

★★★

殆ど死んでいる、という名前の作者によるマンガ。
作者名を表示するのが、最近、なかなかシンドイ。
17年間、異世界で過酷な生活を送ってから2010年代末期の日本に帰還した「おじさん」の異世界話、昔話を交えてのファンタジー・ギャグ漫画、というところだろうか?
異世界おじさんよりも、さらに年長で、しかもゲーム文化にはほとんど関わることがなかった私には、このマンガを語る資格はないように思う。
私が担当者だったら、このマンガの企画を通せなかったと思うな。
17年前と今と、あんまり変わってないじゃん、ということで…

(No.1184)

心臓

★★★

奥田亜紀子のマンガ。
まぁ、ガロ系かな。
いろいろな画風、作風の短編を集めていて、悪くないものもあるけれど、じゃぁこの人を推せるか、この本を推せるかと言うと…
これも『このマンガがすごい! 2020』のオンナ編5位の作品のようだが、そこまでかなぁ、というのが正直なところ。
ガロ系に厳しいんじゃないかと思われそうだけれど、どうしてもこの方法でなければいけなかったのかということを、突き詰めて考えていないところで読者に任せてしまっている気がして…

(No.1183)