マンガばっかり

マンガ批評

ばるぼら

手塚治虫漫画全集(145)
★★
手塚治虫が1973年にビッグコミックに連載していたマンガ。
ストーリーテリングのうまさでなんとか読める作品にはなっているけれど、江戸川乱歩がトリックに行き詰まって苦肉の策をもって探偵小説をしあげていったような「綱渡り」な感じである。
ばるぼら」が黒魔術を使う魔女だったのかどうか知らないが、どういう意図で小説家の下にいるのか、彼らの集団はいったい何を求めているのか、何を恐れているのか、まったくリアリティがない。
三つ目がとおる」なども、荒唐無稽な超能力譚だと言えばそうなのだが、少なくとも「三つ目族」というまことしやかなバックグランドだけは語られていた。
物語に決着を付けるために無理矢理「黒魔術」が登場してきた感じがしてしょうがないのだ…
ところで1973年と言えば、手塚が行き詰まっていた頃だが、そんな頃に三島由紀夫を意識しているとおぼしき小説家を書き、自分の生き方と対比しているような感じがするのは、手塚史を語る上では興味深いと思う。