マンガばっかり

マンガ批評

水木しげる伝


★★★★
水木を妖怪の世界に誘ったというのんのん婆の話をはじめ、おどろおどろしい妖怪話が続くのかと思ったが、むしろダメダメな少年時代、そして戦争体験、紙芝居から貸本屋、マンガ家と喰うために描いていた頃の話が山場だと言えると思う。
戦争に反対だとも賛成だとも言っていないが、日本人はこういう風に戦争をやってきたんだということがうまく描かれていたと思う(晋三も、こういうのをきちんと読んでくれ)。
また凡百の予想に反して妖怪へのロマンだの何だのということよりも、食う為に描いたということが、じりじりとわかるのも興味深かった。
ただ、後半になってくるとテレもあるのかフィクション部分が多くなり、そしてそのフィクション自体もあまり面白くないこともあり、ちょっと尻すぼみであったという感は免れない。
しかし、巻末の年譜と併せて、必読の書であるとは言えると思う。